研究課題/領域番号 |
21K16863
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研究機関 | 滋賀県立総合病院(研究所) |
研究代表者 |
十名 理紗 滋賀県立総合病院(研究所), その他部局等, 主任研究員 (30717020)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 難聴 / 遺伝性疾患 / 症候性難聴 / てんかん / 内耳 |
研究実績の概要 |
本研究は、非症候性難聴(DFNB86)および症候性難聴(DFNA65、DOORS症候群)の両者の原因となるヒトTBC1D24遺伝子に着目し、TBC1D24と相互作用するタンパク質の解明と、CRISPR/Cas9ゲノム編集によってすでに作成したTbc1d24のS324Tfs*3変異マウスに対する、アンチセンスオリゴヌクレオチド (ASO: Antisense Oligonucleotides) を用いた遺伝子治療を目的としている。 TBC1D24はTBCドメインとTLDcドメインからなるが、TBC1D24タンパクの詳しい作用機序については解明されていない。本年度は、TBC1D24と相互作用するタンパク質に関して、酵母2ハイブリッドシステム (Y2H: Yeast two hybrid system) によって同定したKIBRAに着目し、生化学的な方法を用いてTBC1D24のTLDcドメインとKIBRAのC2ドメインが相互作用することを明らかにした。さらに、細胞生物学的アプローチでは、KIBRAはマウスの海馬および歯状回においてTBC1D24と相互作用している可能性が示唆された。 さらに、ヒトおよびマウスのTBC1D24遺伝子のS324Tfs*3変異がマイクロエクソン上にあることに着目し、ASOを用いた遺伝子治療がTbc1d24のS324Tfs*3変異において効果を示すか評価した。具体的には、Tbc1d24遺伝子のS324Tfs*3変異マウスおよびコントロールマウスの胎生17.5日の腎細胞を用いてprimary cell lineを作成した。さらに、マイクロエクソンに作用する複数のASOを設計し、作成したprimary cell lineに対してどの配列のASOが最も効果があるかを評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TBC1D24と相互作用するタンパク質の機能解析に関しては、Y2Hで同定された複数の候補の中から本年度はKIBRAに着目し、TBC1D24とどの臓器でどのように相互作用しているのかを解明するために研究をすすめ、おおむね計画通りに研究が進んでいる。一方、ASOを用いた遺伝子治療に関しては、in vitroではcell lineを用いてASOの評価等が進んでいるが、実際にASOをマウスに投与するための、動物実験に関わる倫理基準等の調整のために時間を要し、研究はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
TBC1D24はTBCドメインとTLDcドメインからなる。KIBRAはTBC1D24の中でもTLDcドメインと相互作用することが今までの研究で解明された。ヒトTBC1D24遺伝子では、複数のミスセンス変異がTLDcドメイン上に存在することが報告されている。次年度は、TLDcドメインにあるミスセンス変異がKIBRAとの相互作用に影響を及ぼすのかを探求する。一方、ASOに関してはTbc1d24のS324Tfs*3変異マウスのprimary cell lineを用いて評価したASOを実際にマウスに投与する準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度購入予定であった、single-molecule fluorescent in situ hybridization (smFISH)装置は研究の遅れにより購入に至らなかったため、次年度購入し研究を行う。
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