研究実績の概要 |
本研究では,網膜静脈閉塞症に対する抗VEGF療法前と浮腫の再発時に眼内の各種タンパク濃度を測定し、網膜機能や、網膜血管構造、血流状態の変化等と併せて検討することを目的として研究を進めてきた. 網膜静脈分枝閉塞症は網膜静脈の血流うっ滞により生じることが知られているが、これまで網膜動脈における血流に関する知見は不足していた。網脈絡膜血流を可視化、数値化可能なレーザースペックルフローグラフィを用いて、網膜静脈分枝閉塞症発症時の罹患領域における網膜動脈の血流を検討した。罹患領域と非罹患領域の網膜動脈血流を、血管抵抗性を表すパラメーターを用いて検討したところ、罹患領域の網膜動脈では血管抵抗性を表すパラメーターの値が有意に上昇していることを見出した。さらに、この血管抵抗性を表すパラメーターを平面像化することで血流の抵抗性を可視化する技術を用いて、網膜静脈分枝閉塞症による網膜動脈の抵抗性上昇を可視化することに成功した。(Scientific report, 2021) これまで明らかにされていなかった網膜動脈の血流変化を見出し、さらに視覚的にわかりやすく描出することで、今後の新しい疾患管理指標になる可能性が考えられる。 また、これらの内容をまとめて、第75回日本臨床眼科学会において報告を行った。 今後は網膜静脈分枝閉塞症に伴う、黄斑浮腫に対する抗血管内皮増殖因子阻害薬の投与前後において眼内タンパク、網脈絡膜血流や画像的所見の変化について検討する予定である。
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