本研究は、近年我が国でも承認された抗VEGF療法を含む集学的治療でも制御不能な難治性血管新生緑内障の病態に関して、マトリセルラー蛋白を中心に検討し、新しい治療標的として臨床応用を目指すことを目的とした。 2022年度も2021年度に引き続き、血管新生緑内障に対する集学的治療成績と臨床病態との相関を検討した。血管新生緑内障に対して初回線維柱帯切除術を施行した症例と、初回チューブシャント手術を施行した症例をそれぞれ後ろ向きに検討したところ、症例の8割程度は手術前に抗VEGF療法を併用していた。また、血管新生緑内障の原因疾患としては8割程度が増殖糖尿病網膜症であり、血管閉塞だけでなく線維増殖も伴った状態である隅角閉塞期に手術となっていた。これらの結果から、制御が難しい血管新生緑内障の病態には、やはり眼内線維血管増殖が重要であり、抗VEGF療法による血管新生抑制のみでは制御出来ない症例が多く存在し、線維増殖の抑制も重要だと考えられた。 治療成績としては、術後早期は眼圧コントロール良好となる症例が多かったが、術後期間が長くなるにつれて、線維柱帯切除術症例ではニードリングが必要となる症例が、チューブシャント手術症例では術後のt-PA前房内投与が必要となる症例が多くなっていた。これは血管新生緑内障に対する手術後も、術前同様線維血管増殖の制御が必要な症例が存在することを示していると考えられた。 血管新生緑内障症例の前房水などのサンプル解析から、ペリオスチンやテネイシンCを含むマトリセルラー蛋白濃度が上昇していることを確認しているが、臨床病態との関連や機能解析までには至っておらず、今後も継続して検討する予定である。
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