研究実績の概要 |
我々はこれまでに、S1Pr3の遺伝子欠失が組織内のS1Pr2のアップレグレーションと関連してマウス滲出型加齢黄斑変性モデルでの新生血管の発生抑制(2019ARVO, 2023 ISER)、S1P3欠失マウスへのS1P2阻害薬の全身投与で新生血管抑制が増強されないことを確認した。 今回我々は、In vitro tube formation assayを用いてS1P3阻害よる管腔形成抑制がS1P2阻害追加により影響するかを評価した。 HUVECを用いたin vitro tube formation assayキット(CBA-200、CBL)を使用した。HUVECを細胞(5×104/150μL)をプレートの各ウェルに播種した。JTE013(選択的S1P2阻害薬)、CAY10444(選択的S1P3阻害薬)の2つの異なる試薬を組み合わせた以下の4つの実験的培養条件を準備した。(1)コントロール培養群(n=3)、(2)100uMのJTE013投与群(n=4)、(3)100uMのCAY10444投与群(n=4)、(4)100uMのJTE013と100uMのCAY10444同時投与群(n=4)。24時間の培養後、フルオレセインで染色した培養液を顕微鏡(BZ-X810、キーエンス)で撮影した。写真はWinROOF(MITANI Corp, Japan)を用いて検査し、無細胞ハニカム構造における無細胞面積を決定した。Student-t 検定を用いて統計学的有意性を決定した。 コントロール群に比べてCAY10444投与群で統計学的に有意に管腔形成が抑制された(p<0.05)。JTE013とCAY10444の同時投与群では、CAY10444投与群に対する管腔形成抑制の追加効果はなかった。 S1P2の阻害によりS1P3阻害による血管新生抑制効果はin vivo同様in vitroでも認めなかったことから、S1P3阻害は先進国中途失明疾患である滲出型加齢黄斑変性治療に対し有望な戦略であると考えられた。
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