研究課題
感染症・自己免疫疾患の合併・再移植などで血管新生を生じた高リスク角膜移植症例では、未だにその40~90%に拒絶反応を伴う。この課題に対して申請者は、制御性T細胞誘導能・エフェクターT細胞抑制能を持つ「骨髄由来免疫抑制細胞」を応用する。これは、顆粒球系細胞の前駆細胞で、癌などの非自己細胞が免疫細胞の働きを阻害するため体内で誘導される。この骨髄由来免疫抑制細胞の高リスク角膜移植症例への応用にあたり、予め「体外」で培養した細胞のアロ抗原に対する免疫抑制能の検証が治療法確立のために解決すべき課題である。そこで本研究は、体外培養した骨髄由来免疫抑制細胞の免疫抑制効果を高リスク角膜移植マウスモデルで検証し、ヒト角膜移植における新規免疫寛容療法開発の基盤研究を実施する。 昨年度はマウス脛骨から骨髄細胞を採取し、体外培養MDSCを作成に成功した。体外培養MDSCを付加した混合リンパ球反応を行い、エフェクターT細胞の増殖抑制ならびにELISA法にてIFNγの発現の低下、IL-2、IL-10、TGF-β1の発現の増加を確認した。マウス高リスク角膜移植モデルに培養MDSCを投与し、免疫染色に よる血管・リンパ管新生抑制効果ならびに角膜移植片の生存率の延長、血管新生の抑制、角膜混濁の抑制を確認した。 今年度は、体外培養MDSCにおける高リスク角膜移植における血管・リンパ管新生抑制能を確認した。さらに、高リスク角膜移植モデルにおける体外培養MDSC投与による免疫抑制能の評価をフローサイトメトリーにて確認した。
2: おおむね順調に進展している
マウス脛骨から骨髄細胞を採取し、体外培養MDSCを作成に成功し、体外培養MDSCを付加した混合リンパ球反応ならびにマウス高リスク角膜移植モデルへの投与実 験を実施し、良好な結果を得た。また、体外培養MDSCにおける高リスク角膜移植における血管・リンパ管新生抑制能ならびに免疫抑制能を確認し、良好な結果を得た。
研究はおおむね順調に進展している。次年度は体外培養MDSCによる制御性T細胞の誘導能の評価、CFSE染色によるT細胞の増殖抑制能の評価ならびに研究結果の取りまとめを行い論文発表を行う。
当該年度の実験計画は良好であるが、COVID-19の影響により発注ならびに購入に遅延が生じ次年度使用額が発生した。次年度は、体外培養MDSCによる制御性T細胞の誘導能の評価、CFSE染色によるT細胞の増殖抑制能の評価ならびに、これらの結果の学術誌への投稿に充当する予定で ある。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Journal of Clinical Medicine
巻: 10 ページ: 4667~4667
10.3390/jcm10204667
Investigative Opthalmology & Visual Science
巻: 62 ページ: 3~3
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