これまで野生型マウスおよびMUC16欠損マウスにドライアイを誘導し、角膜上皮障害の程度に差があるかについて検討したが、差は見られなかったためドライアイは誘導せず、野生型とMUC16の欠損マウスによる炎症反応の増悪について比較することとした。 マウスに、三種混合麻酔薬を腹腔内注射し全身麻酔をかけ、26G針にて角膜上皮に擦過傷を作ったのちに緑膿菌由来のLPSを1μg/5ul点眼し角膜炎を誘導した。LPS点眼の6時間後にマウスを安楽死させ、眼瞼を含む眼球を摘出し、角膜を摘出した。摘出角膜のRNAを抽出後、cDNAを作製してqRT-PCRを行い、IL-1β mRNA、IL-12 mRNA、IL-6 mRNA、MIP-2 mRNA、TNF-α mRNA、MUC1 mRNAおよびMUC4 mRNAなどについて、角膜サイトカインプロファイルを検討した。 Muc 16を欠損することで、同じ膜型ムチンであるMuc 1およびMuc 4の発現が低下することで、炎症誘導性サイトカインであるIL-1βやMIP-2などのサイトカインの発現が上昇していた。摘出角膜への好中球数を計測したところ、野生型マウスと比較し、MUC16欠損マウスで有意に好中球数が増加していた。以上から、MUC16欠損することで、膜型ムチンの発現低下により好中球の遊走を促進することで炎症性サイトカインの発現を上昇している可能性が考えられた。 研究期間全体を通した結果として、引っ掻き回数、臨床所見ともにブタクサ花粉(Ragweed:RW)による免疫を行った群で野生型と比較しMUC16欠損マウスで有意に増加しており、野生型と比較し、MUC16欠損マウスで有意に好酸球浸潤数は低下した。また、MUC16欠損により、好中球の遊走が促進され、炎症性サイトカインの発現が上昇した。
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