研究課題
制御性T細胞(Treg)はマスター遺伝子Foxp3を発現し、免疫応答を抑制的に制御することで自己に対する免疫寛容の確立・維持に重要な役割を担っている。Tregの抑制機能の維持には安定的にFoxp3が発現していることが必要であり、TGF-bなどがFoxp3の発現維持に寄与することが報告されている。近年、cyclin-dependent kinase 8 (CDK8)、そのparalogであるCDK19の阻害剤であるAS2863619が抗原特異的なTregの誘導を介して自己免疫疾患の動物モデルにおいて炎症抑制性に作用していることが報告された。(Sci Immunol, 2019)。そこで本研究課題ではヒトぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を誘導したマウスにAS2863619を投与し、EAUの抑制効果がみられるか検討した。AS2863619を免疫直後から15日間内服投与、対照群には基剤として使用した蒸留水を内服投与し、免疫後10、 14、18、21日目に散瞳下にて眼底を観察し臨床スコアの推移について検討を行った。その結果、全ての観察日において両群間に有意差はみられなかったものの、免疫後18日目の臨床スコアの中央値が基剤群で2.5、AS2863619投与群では0.25でありMann-Whitney U検定にてP値が0.065、免疫後21日目の臨床スコアの中央値が基剤群で2.5、AS2863619投与群では0.50、P値が0.065であり有意差はないものの、AS2863619投与群において臨床スコアが低い傾向がみられた (各群n = 6)。今後、各群の個体数を増やすことでAS2863619投与によるEAUの炎症抑制効果についてさらに検討を進める予定である。またAS2863619投与による生体内のFoxp3陽性T細胞の推移についてさらに検討を行う。
3: やや遅れている
令和3年度では1) ヒトぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を誘導したマウスに免疫直後から15日間AS2863619を投与することでEAU誘導相での投与によるEAUの誘導抑制効果の検討、2) AS2863619投与による生体内(所属リンパ節、脾臓)でのFoxp3陽性T細胞の推移をフローサイトメーターを用いて検討、3) 免疫後12日目からAS2863619を投与することでEAU効果相での投与によるEAU に対する治療効果の検討を予定した。1)についてはAS2863619を免疫直後から15日間内服投与、対照群には基剤として使用した蒸留水を内服投与し、免疫後10、 14、18、21日目に散瞳下にて眼底を観察し臨床スコアの推移について検討したところ、全ての観察日において両群間に有意差はみられなかったものの、免疫後18日目の臨床スコアの中央値が基剤群で2.5、AS2863619投与群では0.25でありMann-Whitney U検定にてP値が0.065、免疫後21日目の臨床スコアの中央値が基剤群で2.5、AS2863619投与群では0.50、P値が0.065であり有意差はないものの、AS2863619投与群において臨床スコアが低い傾向がみられた (各群n = 6)。今後、各群の個体数を増やすことでAS2863619投与によるEAUの炎症抑制効果についてさらに検討を進める予定である。2)、3)については新型コロナウイルス感染対策により研究室の使用時間、人数制限が設定されたこと、さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響により、試薬の搬入やチップ、ピペットなどの消耗品の納品が遅延した影響により当初予定していた実験計画通りに行うことができなかった。そのため令和3年度の達成状況は中程度と考える。
令和4年度では1) ヒトぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を誘導したマウスに免疫直後から15日間AS2863619投与によるEAU誘導相投与によるEAUの誘導抑制効果の検討、2) AS2863619投与による生体内(所属リンパ節、脾臓)でのFoxp3陽性T細胞の推移をフローサイトメーターを用いて検討、3) EAUを誘導後から12日目からAS2863619を投与することでEAU効果相での投与によるEAU に対する治療効果の検討を予定する。1)については個体数を増やし炎症抑制効果についてのさらなる検討、摘出網膜中のIFN-gamma、IL-17、IL-6などの発現を定量PCRにて検討、眼病理組織標本を用いてIFN-gamma、IL-17などの免疫組織染色を行い眼局所でのサイトカイン発現変動について解析する。また所属リンパ節細胞の培養上精中のIFN-gamma、IL-17などのサイトカイン発現についてELISA法を用いて検討を行う。2)については免疫後14、21日目にマウスを屠殺、所属リンパ節、脾臓を摘出し細胞をCD4、Foxp3、CTLA-4、CD103などで染色しAS2863619投与による生体内におけるFoxp3陽性制御性T細胞の変動を確認する。3)についてはAS2863619投与のEAUに対する治療効果を検討するために、免疫後12日目からAS2863619の投与を開始、免疫後10、14、18、22日目に眼底の観察を行いEAU効果相投与によるEAU に対する治療効果を評価する予定である
令和3年度では1) ヒトぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を誘導したマウスに免疫直後から15日間AS2863619を投与することでEAU誘導相での投与によるEAUの誘導抑制効果の検討、2) AS2863619投与による生体内(所属リンパ節、脾臓)でのFoxp3陽性T細胞の推移をフローサイトメーターを用いて検討、3) 免疫後12日目からAS2863619を投与することでEAU効果相での投与によるEAU に対する治療効果の検討を予定したが、新型コロナウイルス感染拡大対策のため研究室使用に関する時間的、人数的な制限が設定されたためため解析が十分に進められていない。そのため2)、3)の実験が施行できていない状況である。そのため上記の解析は次年度に繰り越しとなった。1)については個体数を増やし炎症抑制効果の検討、摘出網膜中のサイトカインの発現(IFN-gamma、IL-17、IL-6など)を定量PCRにて検討、眼病理組織標本を用いてIFN-gamma、IL-17などの免疫組織染色を行い眼局所でのサイトカイン発現変動について解析する。2)については免疫後14、21日目にマウスを屠殺、所属リンパ節、脾臓を摘出し細胞をCD4、Foxp3、CTLA-4、CD103などで染色しAS2863619投与による生体内におけるFoxp3陽性制御性T細胞の変動を確認する。
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Ocular Immunology and Inflammation
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