研究課題/領域番号 |
21K16905
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
中山 真紀子 杏林大学, 医学部, 学内講師 (30736278)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 実験的ぶどう膜炎 |
研究実績の概要 |
制御性T細胞(Treg)はマスター遺伝子Foxp3を発現し、免疫応答を抑制的に制御することで自己に対する免疫寛容の確立・維持に関わっている。さらにTregの抑制機能の維持には安定的にFoxp3が発現していることが必要であり、TGF-betaなどがFoxp3の発現維持に寄与することが報告されている。
近年、cyclin-dependent kinase 8 (CDK8)、そのparalogであるCDK19の阻害剤であるAS2863619が抗原特異的なTregの誘導を介して自己免疫疾患の動物モデルにおいて炎症抑制性に作用していることが報告されている。(Sci Immunol, 2019)。そこで本研究課題ではヒトぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を誘導したマウスにAS2863619を投与することでEAUの抑制効果がみられるか検討した。
AS2863619を免疫直後から15日間内服投与、対照群には基剤として使用した蒸留水を内服投与し、免疫後10、14、18、21日目に散瞳下にて眼底を観察し臨床スコアの推移について検討を行った。その結果、免疫後18、21日目において基剤投与群と比較して、AS2863619投与群で臨床スコアの有意な低下がみられた。 また免疫後21日目に眼球を摘出しHE標本を作成して 病理組織像を両群間で比較したところ、AS2863619投与群でEAUの軽症化がみられた。また網膜組織からRNA抽出し、炎症性サイトカイン(IFN-gamma、IL-17)の発現を定量PCRで比較したところ、AS2863619投与群で有意な発現低下がみられた。CDK19の阻害剤であるAS2863619が EAUの抑制に作用していることが確認されたが、その作用機序についてさらなる検討を要する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度では1) ヒトぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を誘導したマウスに免疫直後から15日間AS2863619を投与することでEAU誘導相での投与によるEAUの誘導抑制効果の検討、2) AS2863619投与による生体内(所属リンパ節、脾臓)でのFoxp3陽性T細胞の推移をフローサイトメーターを用いて検討、3) AS2863619投与による眼内組織(網膜)での炎症性サイトカインの発現変動について検討を行った。 1)についてはAS2863619を免疫直後から15日間内服投与、対照群には基剤として使用した蒸留水を内服投与し、免疫後10、 14、18、21日目に散瞳下にて眼底を観察し臨床スコアの推移について検討した。その結果、免疫後18、21日目において基剤投与群と比較して、AS2863619投与群で臨床スコア臨床スコアの有意な低下が確認された。また眼球を病理組織学的な検討においてもAS2863619投与群においてEAUの軽症化がみられた。2)は免疫後21日目に基剤群、AS2863619投与群から所属リンパ節、脾臓を採取し、CD4陽性Foxp3陽性T細胞の割合について検討したが、両群間に有意な差はみられなかった。3)については両群間の網膜組織を用いて炎症性サイトカイン(IFN-gamma、IL-17)の発現を定量PCRで測定したところ、AS2863619投与群において有意な発現低下を認めた。ほぼ当初予定していた実験計画通りに実施することができ令和4年度の達成状況は中程度と考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度では1)実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を誘導したマウスに免疫直後から15日間AS2863619投与し、免疫後15日目での生体内(所属リンパ節、脾臓)でのFoxp3陽性T細胞の推移をフローサイトメーターを用いて検討、2) EAUを誘導後12日目からAS2863619を投与することでEAU効果相での投与によるEAU に対する治療効果の検討を予定する。3) AS2863619による抗原特異的T細胞の反応を評価するためEAUを誘導したマウスから所属リンパ節細胞を採取し、in vitroで培養する際にAS2863619を添加することでリンパ節細胞から産生される炎症性サイトカイン発現に抑制がみられるか検討する。 1)については免疫後14日目にマウスを屠殺、所属リンパ節、脾臓を摘出し細胞をCD4、Foxp3、CTLA-4、CD103などで染色しAS2863619投与による生体内におけるFoxp3陽性制御性T細胞の変動を確認する。2)については免疫後10、14、18、22日目に眼底の観察を行い臨床スコアの評価を行う。さらに免疫後22日目に屠殺後に眼球摘出、網膜中のIFN-gamma、IL-17、IL-6などの発現を定量PCRにて検討、眼病理組織標本を用いてIFN-gamma、IL-17などの免疫組織染色を行い眼局所でのサイトカイン発現変動について解析する。また所属リンパ節細胞の培養上精中のIFN-gamma、IL-17などのサイトカイン発現についてELISA法を用いて検討を行う。これらの結果からAS2863619によるEAU に対する治療効果を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度では1) ヒトぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を誘導したマウスに免疫直後から15日間AS2863619を投与することでEAU誘導相での投与によるEAUの誘導抑制効果の検討、2) AS2863619投与による生体内(所属リンパ節、脾臓)でのFoxp3陽性T細胞の推移をフローサイトメーターを用いて検討、3) )AS2863619投与による眼内組織(網膜)での炎症性サイトカインの発現変動について検討を行ったが、新型コロナウイルス感染拡大対策のため研究室使用に関する時間的、人数的な制限を行ったため一部研究計画は次年度に繰り越しとなった。 令和5年度では1)EAUを誘導したマウスに免疫直後から15日間AS2863619投与し、免疫後15日目での生体内(所属リンパ節、脾臓)でのFoxp3陽性T細胞の推移をフローサイトメーターを用いて検討を予定している、2) EAUを誘導後12日目からAS2863619を投与することでEAU効果相での投与によるEAU に対する治療効果の検討を予定する。3) AS2863619による抗原特異的T細胞の反応を評価するためEAUを誘導したマウスから所属リンパ節細胞を採取し、in vitroで培養する際にAS2863619を添加することでリンパ節細胞から産生される炎症性サイトカイン発現に抑制がみられるか検討する。
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