今回の研究の第一の目的は、ABCA1 (ATP-binding cassette protein A1)を介した加齢黄斑変性の病態の分子機序を明らかにすることである。今回申請者らは、ABCA1遺伝子のプロモーター部分+ルシフェラーゼのプラスミドを作成し、レンチウイルスを用いてヒト網膜色素上皮培養細胞(ARPE19)に導入し、さらにこの細胞を用いて慶應義塾大学医学部が保有する約1500種類の既存薬ライブラリーを用いてルシフェラーゼアッセイを行いABCA1活性化物質のスクリーニングを施行した。その結果、いくつかの候補薬剤が得られ、ARPE19細胞を用いてin vitroでABCA1活性効果を確認した。今後はマウスを用いたin vivoでの活性化確認を施行予定である。 今回の研究の第二の目的は、380nmの波長(紫)光によって活性化される非視覚受容体であるOpsin5 (OPN5) の網膜内での機能を明らかにすることである。今回申請者らは、まず380nmの波長(紫)光の網膜への照射が与える影響を調べるため、従来のマウス網膜光障害モデルと同様のプロトコールで380nmの波長(紫)光を網膜に照射し、網膜電図および組織切片で障害がないことを確認した。また、長期に渡る380nmの波長(紫)光の照射による影響も解析中で、照射開始後6ヶ月から1年後に網膜電図および組織切片での解析を予定している。また現在、病的血管新生モデル(レーザーCNVモデル)を作成し、380nm(紫)光の光照射群とコントロール群で血管新生体積の比較を施行中で、詳細な条件検討を行っている。今後レーザーCNVモデルで表現型が得られた場合は、その分子メカニズムを解明する予定である。
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