近年、網膜灌流評価のための新たな眼底撮影 機器として光干渉断層血管撮影(Optical Coherence Tomography Angiography:OCTA)が開発され、将来の眼科診療の スタンタードになることが期待されている。しかしながら光干渉断層血管撮影はその基本原理から、検出閾値を下回る遅い血流の血管は描出できず、正確に網膜 灌 流状態を把握することは困難である。糖尿病網膜症(Diabetic retinopathy:DR)において、すべての網膜血管を描出できておらず、我々は そのような領域が 将来的に網膜虚血領域へ進展してゆくとの仮説を立てた。本研究の目的は、複数の網膜スキャン間時間(Interscan Time : IT)設定で光干渉断層血管撮影を行 い、従来の撮影では検出できなかった血流の遅い網膜血管構 を描出・評価することで、糖尿病網膜症診療における有用な知見を探索することである。 今年度、眼科外来を受診した患者の中から、糖尿病網膜症を有する症 例を応募し、同意説明書に沿って当研究の主旨を説明した上で、同意を得られた数十例の症 例に対して、異なる網膜スキャン間時間設定での光干渉断層血管撮 影撮影を行った。また撮影で得られた光干渉断層血管撮影画像を画像解析ソフトを用いて解析 し、血流の遅い網膜血管の検出や形態的特徴の解析、その分布や 量を評価を行った。加えて、網膜血管密度値や中心窩無血管野面積の定量を行い、統計ソフトを 用いて糖尿病網膜症の病気によって差や傾向があるかを調べた。
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