顔面先天異常疾患の病態解明や治療発展において、顔面の正常発達過程の把握は必要不可欠ですが、その全容はわかっておりません。CTやMRIな ど撮像機器の発達により、世界的にも極めて貴重なヒト胎児標本を破壊することなく多数利用した正確な形態解析が可能となってきています。それらの画像データと3次元形態の定量解析 や可視化に優れた幾何学的形態測定学 (Geometric morphometrics) を組み合わせることにより、胎児顔面のダイ ナミックな形態変化を捉えることが可能です。本研究の目的は数理統計解析手法を応用することで、胎児期におけるヒト顔面骨格の3 次元的 かつ連続的な形態変化を定量的に評価し、正常発育様式の全容を解明することです。 今まで、ヒト胚子胎児標本に対して7テスラや3テスラのMRI画像を用いて、胚子期後期から胎児期中期までの顔面骨格形成過程を解明してきました。出生前までの形態形成過程を解明するべく顔面骨格のCT画像を取得しておりましたが、画像の精度の問題から解析を進めるのが困難な状態でした。そこで、2021年度には新たに胎児期中期から後期にかけてマイクロCTを用いてヒト胎児標本の顔面骨格の高精細な画像を取得いたしました。2022年度には、顔面骨格および顔面骨格形成に影響を与えていると考えられる頭蓋底にランドマークを設定、選定を行いました。2023年度には胎児期後期のCT画像を調整し形態解析を進めました。これにより、ほぼ全胎児期を通した顔面骨格成長様式がわかり、成果をまとめて報告する準備をしております。
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