研究課題
我々はこれまで、既存の抗生物質や消毒薬とは全く作用機序の違う光線力学療法(PDT)を、 MRSAと緑膿菌混合感染皮膚潰瘍に対して有効かどうかを検討してきた。昨年度までの研究により、in vitroにおいてALA単独であればMRSAには殺菌効果が認められるが、緑膿菌にはEDTA-2Naを添加することで殺菌校があることがわかった。混合感染に対しては、PDTを行っても、菌交代現象は起こらず、両者を同等に減少させることがわかった。本年度は、マウス背部に、2つの4mm大の皮膚潰瘍を作成し、一方を感染していないコントロール群、もう一方をMRSAと緑膿菌を混合感染したものに、ALA0.5%、EDTA-2Na0.005%軟膏を塗布して、410nmLEDを9J/㎝^2を連日照射し、PDTを行ったところ、創傷治癒は促進し、感染していない潰瘍と同等のスピードで治癒した。潰瘍表面の細菌数も、PDTにより有意に減少した。in vitro同様に細菌の減少が創傷治癒が促進した理由であると考えた。また、従来、臨床において皮膚潰瘍治療に使用される、精製白糖ポビドンヨードやスルファジアジン銀クリームを混合感染潰瘍に塗布して、創傷治癒スピードを我々のPDTと比較したところ、有意にPDTが創傷治癒スピードを亢進することがわかった。PDTは、抗生物質と全く違う作用により殺菌を行うため、耐性菌ができない。また、我々の研究により、MRSAにも緑膿菌にも両方に殺菌効果があるということがわかったので、実際の臨床現場においても、非常に有用な治療法であると考えられた。
すべて 2024
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Photodermatology, Photoimmunology & Photomedicine
巻: 40 ページ: -
10.1111/phpp.12959