研究実績の概要 |
味覚器で酸味に関係するH+やCO2の受容を担うotopetrin(OTOP)およびcarbonic anhydrase(CA)が、中枢化学受容器におけるCO2やH+受容に寄与する可能性を検討するため、まずマウス延髄腹側表層部におけるCA4の発現について免疫組織化学的手法を用いて検討した。潅流固定後に脳を摘出し、20μmの凍結切片を作成した。抗CA4抗体による一次染色を行った後に標識二次抗体による染色を行い、レーザー顕微鏡で観察したところ抗CA4抗体陽性細胞が確認された。次に、先天性中枢性低換気症候群の原因遺伝子であるphox2b発現細胞がCO2やH+の受容に関与すると考えられていることから、CA4とPhox2bの多重染色を行ったところ、共発現している細胞が確認された。CO2/H+に感受性を持つアストロサイトが延髄腹側呼吸ニューロン群を通して呼吸ニューロンを活性化させるという報告(Thomas & Spyer,2000;Gourine & Kasparov,2011)があることから、グリア細胞マーカーGFAPとCA4の共発現についても同様に多重染色を行い解析した。 また、脳内の神経活動マーカーであるc-fosの発現が高CO2換気刺激で上昇することが知られている(Wakai et al., 2015)ことから、濃度の異なるCO2換気刺激を行った際の延髄腹側呼吸ニューロン群におけるc-FosとPhox2bとの共発現について、多重染色を行い解析したところ、大気よりも高い濃度のCO2で刺激した際には抗Phox2b抗体陽性細胞の1/3程度が抗c-Fos抗体にも陽性を示した。
|