研究課題/領域番号 |
21K16932
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
園田 聡一朗 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10831985)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯髄幹細胞 / 胸腺間葉系ストロマ細胞 / 制御性T細胞 / 自己免疫疾患 |
研究実績の概要 |
胸腺は発生するT細胞の教育を担う免疫システムの中枢であり、自己免疫疾患の発症にも関与する。最近の研究では、神経堤細胞に由来する間葉系細胞が正常なT細胞のセレクションに重要な役割を果たすことが報告されており、その機能異常が自己免疫疾患の発症原因になることが推測される。本研究では胸腺における制御性T細胞のセレクション機序に着目し、自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスのモデルマウスであるMRL/lprマウスと野生型マウスにおける胸腺間葉系ストロマ細胞と全身性エリテマトーデスの病因の関連を検討する。また、歯髄幹細胞の移植治療が全身性エリテマトーデス治療に効果を発揮することに着目し、歯髄幹細胞移植治療のメカニズムと胸腺機能制御の関わりを解明することを目的としている。 本年度は、昨年度に培養方法を確立した胸腺髄質間葉系ストロマ細胞の胸腺T細胞制御能を解析した。マウス胸腺からCD4シングルポジティブ細胞ならびにCD8シングルポジティブ細胞、CD4・CD8ダブルポジティブ細胞を単離し、胸腺髄質間葉系ストロマ細胞との共培養実験を行なった。非接触型共培養では胸腺T細胞の免疫表現型に変化は認められなかったが、接触型共培養においてCD4シングルポジティブ細胞からCD4・CD25ポジティブの制御性T細胞へ分化したポピュレーションが同定された。また、接触型共培養においては、アポトーシスを誘導された胸腺髄質間葉系ストロマ細胞が増加していることが明らかになった。 今後の研究展開として、これらの結果に基づき、胸腺髄質間葉系ストロマ細胞の制御性T細胞誘導メカニズムとアポトーシス誘導メカニズムの関連に着目して研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度の研究実績に基づいて、胸腺間葉系ストロマ細胞の培養系を用いた胸腺T細胞制御能の解析を行なった。胸腺間葉系ストロマ細胞と胸腺T細胞を共培養することによって、胸腺間葉系ストロマ細胞がCD4シングルポジティブ細胞の制御性T細胞への分化を誘導する現象を捉えることが出来た。我々は以前の研究成果で歯髄幹細胞移植により、宿主の骨髄間葉系幹細胞が賦活化されることを明らかにしている。胸腺間葉系ストロマ細胞はプラスティックディッシュ付着性のコロニー形成細胞を含んでいることから、胸腺には間葉系幹細胞としての特性を持った細胞が存在すると考えられる。したがって、歯髄幹細胞移植が宿主の胸腺間葉系ストロマ細胞の機能に影響を与えることが予想され、当初の仮説に沿った研究成果であると考えている。また、一般的に胸腺T細胞自身のアポトーシスによるセレクションが知られているが、胸腺T細胞が間葉系ストロマ細胞のアポトーシスを誘導することは知られていない。研究を展開する新しい着眼点が得られたものと考えている。したがって、研究はおおむね順調に進呈していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推方策として、胸腺間葉系ストロマ細胞の制御性T細胞誘導メカニズムを解析する。接触型培養においてのみ制御性T細胞の誘導が認められた点に着目し、胸腺間葉系ストロマ細胞における細胞表面抗原の解析を行う。また、胸腺における制御性T細胞誘導においてはサイトカインによる刺激が重要であることが知られている。したがって、非接触型共培養と接触型共培養系における間葉系ストロマ細胞のサイトカイン発現を比較解析する。さらに、胸腺T細胞との接触型共培養系で、間葉系ストロマ細胞のアポトーシスが誘導されたという結果に基づき、アポトーシス誘導因子の刺激が間葉系ストロマ細胞の機能に与える影響ならびに間葉系ストロマ細胞のアポトーシスが制御性T細胞誘導に与える影響について解析を行う。 上記の解析により同定したメカニズムを、全身性エリテマトーデスのモデルマウスであるMRL/lprマウスにおいて解析することで、このメカニズムが全身性エリテマトーデスをもたらす原因となるものかどうか検討を進める。 また、移植された歯髄幹細胞が上記メカニズムに及ぼす影響を解析し、治療メカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した消耗品の納品が年度を跨いだために次年度使用額が生じた。消耗品は抗体であり、4月初旬に納品済みである。
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