研究課題/領域番号 |
21K16933
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久本 由香里 九州大学, 歯学研究院, 助教 (40729026)
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研究期間 (年度) |
2021-02-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨吸収 |
研究実績の概要 |
本年度は、マウス骨髄由来初代培養破骨細胞を用いたin vitro解析を行った。初めに、マウス骨髄細胞をRANKLで刺激することにより破骨細胞への分化が誘導できるが、このときリコンビナントRBP4を同時に曝露した場合に破骨細胞の分化能や機能がどう変化するのかを検討した。その結果、RBP4を曝露することによりTRAP陽性多核細胞数が増加し、破骨細胞の分化が促進することが示唆された。このとき、破骨細胞分化マーカー(NFATc1、カテプシンK等)の発現を確認した結果、RBP4を曝露した細胞で上昇していた。RBP4曝露による分化シグナルへの影響についてはまだ解析できていないため今後進める予定である。 次に、RBP4の受容体であるSTRA6の破骨細胞における発現を検討した。その結果、どの分化段階でも発現は確認できたが、成熟破骨細胞でより高く発現することが示された。今後はこのSTRA6をレンチウイルスを用いてマウス骨髄細胞に過剰発現またはshRNAによりノックダウンさせ、破骨細胞の分化や機能、分化シグナルへの影響を検討する予定である。 以上の結果から、破骨細胞にはRBP4-STRA6シグナルが存在し、破骨細胞の分化や機能を調節している可能性が示唆された。RBP4は脂肪細胞が産生する生理活性物質であり肥満や糖尿病患者の血中および尿中でその濃度が健常者よりも高いことが報告されている。したがって、RBP4が破骨細胞の分化制御に関与するかもしれないという本研究結果は、肥満や糖尿病と骨破壊疾患を関連づける重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度に、レンチウイルスを用いてマウス骨髄細胞へ目的の遺伝子を過剰発現させるために細胞の播種数やウイルス量の条件検討を行い最適な条件を設定した。しかしながら、実際にSTRA6の発現ベクターを使用して設定した条件に従ってマウス骨髄細胞に過剰発現させても細胞への感染がうまくいかず遺伝子の発現量をあげることができなかった。そのため、再度条件を設定しなおすための予備実験に時間を費やし、STRA6過剰発現による破骨細胞分化への影響について解析を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究を進めるにあたって実験の条件設定や準備はある程度整ったので、今後は当初の研究計画に沿って解析を進めていく。次年度中にin vitro解析により破骨細胞におけるRBP4の影響とそのシグナルを解明し、in vivo実験の準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度から繰り越しした研究費が多めにあったこと、当初計画していたレンチウイルスを用いた実験等が予定通り遂行できなかったことが理由である。次年度以降、in vitro実験と並行してin vivo実験も進めていく予定であるため、必要な物品の購入や学会発表等の旅費に使用する予定である。
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