研究課題/領域番号 |
21K16938
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中谷 有香 日本大学, 歯学部, 助教 (60781391)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 島皮質 / 腕傍核 |
研究実績の概要 |
口腔顔面領域における侵害情報は主に三叉神経脊髄路核尾側亜核(Sp5C)に入力し、シナプスを介してラットでは95%が腕傍核へ投射することが報告されている。腕傍核は視床を介して痛みの性質を弁別する役割を担う一次体性感覚野へ投射する経路と情動形成に関与する扁桃体へ投射する経路の中継核として知られている。味覚や痛覚など複数の感覚情報が収束する島皮質は腕傍核へ下行性に投射しているが、視床または扁桃体へ投射する腕傍核ニューロンのどちらに主にシナプスを形成しているかについては明らかではない。そこで本研究では、島皮質→腕傍核の下行性投射が腕傍核→視床または腕傍核→扁桃体のどちらの経路を賦活するか検索することを目的とした。 まず,腕傍核は内側結合腕傍核および外側結合腕傍核に分類され、特にSp5Cから腕傍核へのニューロンの投射先は外側腕傍核と言われているが、腕傍核ニューロンでシナプス応答を本当に記録できるか明らかにではない。そこで本年度はAAV5-CAG--hChR2(H134R)-mCherryをSp5Cに注入し,4-5週後に腕傍核を含む急性脳スライス標本を作製してホールセル・パッチ法にて腕傍核ニューロンから記録を行いSp5Cから投射するニューロンの軸索の終末部を光刺激し興奮性シナプス後電位を記録することで、三叉神経領域の感覚情報を受容するニューロンの局在を明確にすることを目的とした。延髄へ懸濁液を注入するにあたり手技の会得に難航し時間を要しているが、これまでにシナプス応答を記録した部位は外側腕傍核の中腹であった。 また、扁桃体または視床へ投射する腕傍核ニューロンの局在を明らかにするためにそれぞれの神経核に逆行性トレーサーを注入し、スライス標本を作製して局在を明らかにすることを目的とした。現在、懸濁液を注入する座標が安定せず難航しているが、今後実験を重ねていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は①腕傍核に投射するSp5Cニューロンの投射部位の検討②扁桃体および視床に投射する腕傍核ニューロンの発現部位の同定③島皮質から腕傍核へ投射するニューロンが扁桃体および視床に投射する腕傍核ニューロン活動に関与しているのかを検討することであった。現段階では延髄に懸濁液を注入する手技の習得に時間を要しているが、三叉神経脊髄路核から腕傍核へ投射するニューロンの終末はおおむね外側腕防核であることを確認している。扁桃体または視床へ投射する腕傍核ニューロンの局在の同定には逆行性トレーサーを注入する座標が確定していないため実験を重ねる必要があるが、島皮質へ懸濁液を注入する方法は確立しているので予定の実験を進めていくつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
まず、扁桃体および視床へ投射する腕傍核ニューロンを同定するために、それぞれの神経核に逆行性トレーサーを注入する座標の位置を明らかにする。この際に視床においては三叉神経支配領域からの体性感覚の中継核亜核として知られる後内側腹側核と髄板内核群に分けて検討する。そしてこの扁桃体または視床へ投射する腕傍核ニューロンがSp5Cから入力をうける領域が被っているかを検討する。 次に島皮質ニューロンが主にシナプス形成をしているのは腕傍核ニューロンのうち扁桃体と視床のどちらへ投射するニューロンであるかを検討していく。手順としては、島皮質ニューロンにAAV5-CAG--hChR2(H134R)-mCherryを注入し,4-5週間後に腕傍核を含む急性脳スライスを作製する。そして、あらかじめ逆行性トレーサーにて明示した腕傍核における扁桃体または視床へ投射するニューロンからホールセル・パッチクランプ法にて記録を行い、島皮質→腕傍核下行性投射ニューロンの軸索終末に発現しているChR2を光刺激によって開口させ、シナプス応答を記録することでそれぞれのシナプス伝達様式を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集のため予定していた神経科学会(兵庫県 4日間)および欧州疼痛学会(アイルランドへの学会参加がコロナ蔓延のため中止としたことと、研究施設の引越しのため動物実験施設が閉鎖され、実施できない期間が生じたため残金が生じた。今年度特段の計画の変更はなく、次年度の繰越金はR4年度の助成金と合わせて、島皮質から腕傍核への下行性投射経路の機能の解明に取り組む。
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