痛みは傷害から身体を守るために必須の感覚で,組織損傷が正常に治癒するにしたがって消失する。しかし,一部の患者においては器質的な問題がないにも関わらず,慢性痛と呼ばれる有害な痛みや不快な感覚が持続することがある。歯科医療において埋伏智歯の抜歯などによって生じた下歯槽神経の損傷によって気質的変化を伴わない慢性痛を訴えて来院する患者は少なくない。最近これら慢性痛の原因の一つに,中枢神経系における可塑的変化が関与していると考えられている。島皮質→腕傍核の下行性投射が口腔顔面領域における侵害情報伝達の調節に関与する可能性が本研究で示唆された。以上は慢性痛に対する新規治療の開発の基盤となる可能性がある。
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