研究実績の概要 |
歯周病患者は制御性T細胞(Treg)の増加により免疫監視機構が抑制状態にあると想定され、固形がんの発生・増殖に影響を及ぼしているという事を明らかにすることを目的に者研究を行った。 対象は2018年11月から2020年3月に信州大学医学部附属病院口腔管理センターならびに相澤病院口腔病センターを受診した、癌患者30名、非癌患者31名。歯周病の評価は「標準的な成人歯科検診プログラム・保健指導マニュアル」(日本歯科医師会)および「歯周病献身マニュアル2015」(厚生労働省)に則り行った。また、末梢血からフローサイトメトリー解析並びに、IL-6,VEGF,TGFβ-1,CCL22濃度解析を行った。統計解析はPCソフト(JMPv13.2,SAS Inc.,NC,USA)を用いて、Pearson検定、Wilcoxon検定、Pearsonの相関係数、Spearmanの順位別相関係数、TukeyのHSD検定、Steel-Dwass検定、および多変量回帰分析などを行い、P値<0.5を有意とした。 30人の癌患者の内訳は、頭頸部(12名)、肺(5名)、大腸(4名)、膵臓(3名)、乳房(2名)、食道(2名)十二指腸(1名)、胆管(1名)、うち25名に歯周病を認めた。31名の非癌患者31名では17名に歯周病を認めた。以上より歯周病のない非癌患者(,14名)歯周病のある非癌患者(17名)歯周病のない癌患者(5名)歯周病のある癌患者(25名)の4群に分けられた。多変量解析において、IL-6では癌の有無、癌患者では歯周病の有無が有意な影響を与えていた。T-regでは癌と歯周病の両方が末梢血内の割合に有意な影響を与えていた。 癌と歯周病の存在が相乗的に末梢血内のT-regとIL-6を増加させ、癌における免疫抑制と免疫回避の根本的な原因の1つである可能性が示唆された。
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