研究課題/領域番号 |
21K16950
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中嶋 光 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (20849103)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Osteopontin / 口腔扁平上皮癌 / 放射線耐性 / CD44 |
研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌(OSCC)において、放射線治療は重要な治療戦略の一つであるが、放射線抵抗性を示す細胞の存在が患者予後を極めて不良にする。 Osteopontin(OPN)を中心としたOSCC放射線耐性機構を明らかにし、OPNを標的とした新たな治療法開発に繋げることを目的に研究を行った。 本年度の実績としてOSCC培養細胞にOPN添加し放射線照射の感受性試験を行い、OPN添加により有意に放射線照射後の生存率が上昇することを認めOPN添加が放射線耐性能を向上させることを確認していたが、上記の実験系にさらにOPNの代表的なレセプターであるIntegrinαVβ3の中和抗体を投与すると、OPN添加により得られた放射線耐性能がキャンセルされることを示した。同様にOPN添加により放射線照射後の細胞死に関与する活性酸素種(ROS)減少を認めたが、IntegrinαVβ3中和抗体投与によりこの反応もキャンセルされることを示した。これにより添加したOPNがIntegrinαVβ3の経路を介してROSを制御し、OSCC細胞の放射線耐性能獲得に寄与している可能性を示した。しかしながら以前の検討ではOPN添加し放射線照射を行った細胞内のグルタチオン(GSH)量が有意に上昇し、CD44中和抗体投与により反応がキャンセルされることも示していたが、IntegrinαVβ3中和抗体ではGSH量の低下は認めず、OPN-CD44経路が細胞内の還元酵素であるGSHを制御している一方で、OPN-IntegrinαVβ3経路では別経路で放射線耐性能をコントロールしている可能性が考えられた。今後さらなる検討を進め、経路の解明につなげたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大学附属病院での診療業務にも従事しており、新型コロナウイルス感染拡大に伴う就労制限や、研究従事に対する制限があったこと、研究資材の物流の滞りも継続してあり研究活動に支障が出た。
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今後の研究の推進方策 |
2023年5月には新型コロナウイルスに対する対応も緩和され、以前と同等の研究活動ができるものと推察される。研究やデータ集積を加速させ課題解決に臨む。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な物流の停滞により予定していた研究資材の納入が遅延しているため 動物実験関連の物品を購入予定
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