研究課題/領域番号 |
21K16954
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
石田 尚子 昭和大学, 歯学部, 助教 (00882531)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ヒトiPS細胞 / CRISPR-Cas9 / RNP / 唾液腺導管癌 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
正常細胞に段階的な遺伝子変異が蓄積することで癌化が生じる多段階発癌モデルが細胞の癌化モデルとして提唱されているが、特定の遺伝子変異の蓄積が真に癌化に寄与するか否かは適切な実験モデルがなく、長らく不明であった。一方で、3次元的なミニ臓器の作製法であるオルガノイド培養技術を応用して、大腸オルガノイドによる大腸癌の多段階発癌の再現実験が近年報告された。本研究では、最近開発されたヒトiPS細胞由来唾液腺オルガノイドを用いてin vitroで遺伝子変異の蓄積状態を再現することにより、これまで唾液腺腫瘍の発生に関与するとされてきた遺伝子変異の腫瘍原性を検証し、ヒト唾液腺腫瘍発生メカニズムや関連遺伝子の直接的な解析を目的としている。 本年度は初めに、ヒトiPS細胞へ導入するターゲットの遺伝子変異を決定した。高悪性度の唾液腺導管癌には遺伝子変異が多数報告されており、その中でも高頻度に認められるTP53遺伝子変異を始めに導入することにした。疾患関連遺伝子変異のデータバンクであるCOSMICにより報告例のある変異配列を検索し、最も頻度の高い配列を抽出した。次に報告例のある遺伝子変異を再現するため、CRISPR-Cas9システムを使用した。Cas9タンパク質とin vitroで転写したsingle-guide RNAの複合体であるRNP、およびノックインする変異配列の鋳型となる一本鎖DNAであるssODNをヒトiPS細胞へ導入し、遺伝子変異を誘導した。遺伝子変異の確認には変異配列に対応したプライマーを用い、PCR法により解析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
鋳型DNAであるssODNは100塩基ほどの長さがあり、人工的に合成するため、実績のある海外の企業に委託をしていた。しかし、コロナ感染症流行下の世界情勢により、製造および輸入に時間を要したため、実験の実施に遅れがでた。
|
今後の研究の推進方策 |
変異導入細胞のサブクローニングを限界希釈法により行う。クローン細胞集団に対してはウェスタンブロッティング法によるタンパク質レベルの変異確認と、サンガー法等のゲノムシークエンスによる配列の決定を行う。その後、TP53単独の変異を有する唾液腺オルガノイドの作製および更なる遺伝子変異の導入を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は実験の遅れにより、外部委託を予定していたDNAシークエンスの費用および唾液腺オルガノイド作製に必要な試薬の購入費用が発生しなかった。また、コロナ感染症流行下において学会がWeb開催されたため、旅費が発生しなかった。 次年度はDNAシークエンスおよびオルガノイドの作製を予定している。また、唾液腺オルガノイドは組織学的解析およびヌードマウスへの移植実験による機能評価をするため、解析費用やマウスの購入費用、飼育に掛かる費用が生じる予定である。
|