研究課題/領域番号 |
21K16956
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
近藤 智豊 (平賀智豊) 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (60733590)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 細胞外小胞 / 唾液 / リキッドバイオプシー / 口腔がん / エクソソーム |
研究実績の概要 |
エクソソームに代表される細胞外分泌小胞(Extracellular vesicle, EV)はあらゆる細胞から分泌されており、その大きさ、放出機構は多様性に富んでいる。 現在、癌の微小環境形成、薬剤耐性獲得、免疫療法の制御などの分子機構を語る上でEVは欠くことできない因子となっている。このような潮流の中、EVを活用し た、新しい癌の診断法、治療法の確立が期待されている。これまでに、健常者の唾液が含む「小さなEV(≒エクソソーム)」と「大きなEV」を分けて解析すること から、大きなEVは小さなEVとは異なる分子群が運ばれていることを見出してきた。 本研究ではこの知見を発展させ、口腔扁平上皮癌患者(OSCC)の唾液に含まれる、予後に関連したマーカー分子がどのEV分画に含まれているかを整理し、EVの大き さ情報も加味した、低侵襲で操作の簡便な新しいOSCC予後診断システムの確立につなげる。 今年度は、唾液を「大きなEV」「小さなEV」「さらに小さな可溶性分子」を含む3つの分画に差分遠心法で分け、それぞれのEV分画に対してマーカー解析を行った。これら3分画にOSCCとの関連が報告されているEGFRが、各分画で特異的なパターンで濃縮していることを確認した。また、OSCC切除検体でのEGFR発現を免疫 組織学的に評価した結果、唾液3分画において様々なEGFR発現パターンがあるのと同様に、組織でのEGFR発現パターンも異なることがわかった。また、一部の予後不良症例では細胞内に顆粒状にEGFRが発現しており、 EGFR陽性細胞外小胞を含んでいる可能性が示唆された。 来年度は、EGFR陽性EVの生化学的、分子生物学的特徴をさらに調査し、OSCCの進行とどのように関連するかを明らかとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、唾液を「大きなEV」「小さなEV」「さらに小さな可溶性分子」を含む3つの分画に差分遠心法で分け、それぞれのEV分画に対してOCCに関連した分子の発現を調査したところ、これら3分画にOSCCとの関連が報告されているEGFRが、各分画で特異的なパターンで濃縮していることを確認した。本結果は、Scientific Reportsに掲載された(Hiraga et al. Pentapartite fractionation of particles in oral fluids by differential centrifugation)。現在は、EGFR陽性細胞外小胞の機能解析を行うため、口腔がん細胞株HSC3の培養上清由来の細胞外小胞を精製・単離しその特徴を調査している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、サンプル数を増やし調査を進めていく。また、唾液由来細胞外小胞でのEGFR発現分布については早期癌へ対象を拡大し解析を行う。また、EGFR陽性EVを単離し、in vitro実験を通してがんの浸潤・転移のメカニズムでの機能役割について調査を行う。 臨床実装できる診断法を確立するために、超遠心ではなくフィルターを用いたEV分画法と、上記マーカー解析を組み合わせる事で、操作の迅速化・簡便化を図 る。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、唾液の差分遠心法による分画化やOSCC切除検体の生化学的、分子生物学的特徴の解析を中心に行なったため、低コストで行うことができた。しかし、次年度以降は、EGFRの変異解析等の遺伝学的特徴の調査と血液サンプルとの比較解析を行うため、次年度への助成金の繰越を要すると判断した。
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