研究実績の概要 |
本研究は口腔扁平上皮癌およびその前駆病変である上皮性異形成を規定する分子生物学因子の検索を目的とする。これまでの次世代シーケンサーを用いて扁平上皮癌モデル動物の網羅的検索をおこなった研究より、S100A8, S100A9の高発現が上皮性異形成および扁平上皮癌で明らかとなった。そのタンパク発現とその分布を検討するため、ラット扁平上皮癌組織を用い免疫組織化学的に解析し、病変内における発現を認めた。またヒトの上皮性異形成および扁平上皮癌を含む口腔上皮性腫瘍性病変においてFFPE(ホルマリン固定パラフィン切片)を用いてS100A8, S100A9とその関連因子であるEMMPRINにおける解析を行った。その結果、S100A8, S100A9は腫瘍細胞である上皮細胞のみならず腫瘍間質を含めた結合組織内に発現する細胞を認めた。腫瘍性病変では間質内のS100A8, S100A9発現細胞は増加傾向を認めることからこれらの細胞は腫瘍の進展に関連することが示唆された。またS100A9の受容体とされるEMMPRINは上皮細胞において、正常の口腔粘膜では基底細胞の細胞膜に発現に対し、上皮性異形成および扁平上皮癌では棘細胞/棘細胞様細胞にも発現を認めた。今後も腫瘍細胞である上皮細胞、間質細胞におけるS100A8, S100A9発現の解析とそのメカニズムと働き、また腫瘍細胞と間質細胞の相互作用の有無等について検討する予定である。
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