研究実績の概要 |
本研究は口腔扁平上皮癌およびその前駆病変である上皮性異形成の発生に関する分子生物学的因子の検索を目的とし、病変におけるS100A8, S100A9の高発現に着目してきた。これまでに、ラットおよびヒト病変組織における上皮細胞では恒常的に発現を認めたが、腫瘍性病変では腫瘍細胞である上皮細胞内での局在の変化を認め、腫瘍化との関連が示唆された。また上皮細胞の他、免疫組織化学染色にて腫瘍間質細胞にもこれらを発現した細胞を認めた。腫瘍間質には腫瘍関連マクロファージ(TAM)や骨髄由来免疫抑制性細胞(MDSC)など腫瘍の増殖や進展に関連する因子が知られていることから、これらとS100A8, S100A9発現を検索するために、CD68, CD163, CD14, CD33の免疫組織化学染色を行い、S100A8, S100A9の目的と発現機序を検索している。腫瘍免疫応答の解明の他、組織学的診断において客観的特徴が必要とされる上皮性異形成の診断の向上につながると考えられる。
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