研究課題
齲蝕原性細菌であるStreptococcus mutansのうちコラーゲン結合蛋白Cnmを発現する株の口内保有と脳内出血の関連が明らかとなっている.Cnm陽性S. mutans保有群では脳微小出血(CMBs)の数が有意に多い (Tonomura et al. Sci Rep. 2016).また,CMBs増加のリスク比が13.9倍であった (Hosoki et al. Stroke. 2020).しかしながら,Cnmを発現する S.mutans 保有者すべてがCMBsを保有するわけではなく,また,CMBsの保有数にも差がある.S.mutansのCnmタンパクの基本構造でコラーゲン結合ドメイン(Aドメイン)とそれに続く繰り返し配列のBリピート領域があり、この領域の機能は現時点で不明である。我々は,本研究の予備実験で、リピート長が長い領域を持つCnmはCMBsの重症度が高い傾向であるデータを保有しており、本研究で国立循環器病研究センターに脳卒中で入院した患者のデンタルプラークを採取し,培養にてCnm陽性S. mutansが陽性と判明したデンタルプラークから,この領域の塩基配列長をPCRによって測定し、塩基配列長によってCMBsの重症度が層別化できるかどうかを検討する。2021年度は、本研究が施行される国立循環器病研究センターにおいて、頭部MRIの撮影を行っている脳卒中入院患者から、デンタルプラークの採取を行った。採取された患者数は60名で、年齢の中央値は71歳(四分位 60.25~79.00歳)であり、男性は41名(68.3%)であった。来年度は、これらのデンタルプラークと頭部MRIの解析を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
患者のデンタルプラークの採取と頭部MRIの撮影を順調に行っており、現在撮影した頭部MRIの画像解析も並行して施行中である。
2022年度は、頭部MRIの解析(deep CMBsの定量、大脳白質病変の定量、Fazekas分類による大脳は楠津病変のgrade化、Total SVD score)を行う予定としている。定量解析には少なくとも2名の脳神経内科領域に精通する医師を必要とするため、2名以上の読影可能な医師を共同研究者として早めに解析を開始することが重要である。
旅費として300,000円を計上していたが、COVID-19蔓延のため多くの学術総会に参加できず、次年度使用額が生じた。
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Frontiers in Neurology
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