研究課題
齲蝕原性細菌であるStreptococcus mutansのうちコラーゲン結合蛋白Cnmを発現する株の口内保有と脳内出血の関連が明らかとなっており、Cnm陽性S. mutans保有群では脳微小出血(CMBs)の数が有意に多い。しかしながら、Cnmを発現する S.mutans 保有者すべてがCMBsを保有するわけではなく、また、CMBsの保有数にも差がある。S.mutansのCnmタンパクの基本構造でコラーゲン結合ドメイン(Aドメイン)とそれに続く繰り返し配列のBリピート領域があり、この領域の機能は現時点で不明である。本研究が施行される国立循環器病研究センターにおいて、頭部MRIの撮影を行っている脳卒中入院患者から、デンタルプラークの採取を行った。Cnm陽性S. mutans保有患者数は68名で、年齢の中央値は71歳(四分位 60.25~79.00歳)であり、男性は41名(60.3%)であった。深部脳微小出血(CMBs)を2個以上保有している患者は27名(39.7%)であった。深部CMBsの中央値は1(0~5)個であった。その後、採取したデンタルプラークから,Bリピート領域の塩基配列長をPCRによって測定した。486 bpを境に長または短と2群に分割し、Bリピート長が短い患者が14名(20.6%)、長い患者が50名(73.5%)であった。4名については、PCRのバンドが発現せず判定不能であった。脳MRIのT2*-GREでCMBsをカウントして、深部CMBsを2個以上保有している患者の株を悪性株、深部CMBsを1個以下の場合を良性株としたところ、Bリピート長が短い患者のうち12名が良性株であり、Bリピート長が長い患者のうち25名が悪性株であった。このため、Bリピートの長短が深部CMBsの重症度と関連することが示唆された。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Eur J Neurol
巻: 30 ページ: 3487-3496
10.1111/ene.15720