研究課題/領域番号 |
21K16971
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小野 太雅 九州大学, 大学病院, 助教 (90884734)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイオハイブリッドインプラント / 歯根膜幹細胞株 / バイオ3Dプリンティング / チタン / ハイドロキシアパタイト |
研究実績の概要 |
現在、インプラント治療で用いられるインプラント体は、主に生体不活性材料で作製されており、骨への直接的な結合であるオッセオインテグレーションにて支持を得ている。一方で、生体不活性材料は骨と化学的に結合しないため、生体活性材料でのコーティングにより、インプラント体を骨へ化学的に結合させる研究が数多く行われている。また、歯根膜を持たないインプラント体は、歯根膜由来のバリア機構や固有感覚が存在しないため、細菌感染を生じやすく、過度な咬合圧の原因となることもある。これらの欠点を補うため、歯根膜とインプラント体との複合体である「バイオハイブリッドインプラント(BioHI)」の開発が進められている。申請者は既に、バイオ3Dプリンタを応用し、未分化なヒト歯根膜クローン細胞株 (1-17細胞株) を三次元的に積層することで、歯根膜同様に多層の細胞から構成されるチューブ型構造体 (1-17TB) の作製に成功している。そこで本研究では、様々な材料から作製したインプラント体と1-17TBの複合体(1-17TB-IMP)を作製し、それらについて分子生物学的解析を行うことで、1-17TB-IMPがBioHIとして機能するかについて検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1-17TBとチタンコアを組み合わせた1-17TBTi、および1-17TBとハイドロキシアパタイト焼成体コアを組み合わせた1-17TBHAを作製し、それらのキャラクタリゼーションを行った。その結果、1-17TB、1-17TBTi、および1-17TBHAのいずれにおいても、多くの細胞が生存していた。一方、1-17TBおよび1-17TBTiと比較し、1-17TBHAでは、高いHGF、SDC1、ならびにVEGF発現が認められた。さらに、1-17TBHAでは、高いCEMP1およびOCN発現も認められた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果から、ヒト歯根膜幹細胞から形成した歯根膜構造物には、ハイドロキシアパタイト焼成体がコアとして適している可能性が示唆された。一方、1-17細胞株は人から樹立した細胞株であるため、移植した場合には免疫的に拒絶される可能性が高い。そのため、申請者らはiPS細胞に着目している。申請者らの研究室では、iPS細胞から歯根膜幹細胞への分化誘導法を確立していることから、この方法を用い、iPS細胞から分化誘導した歯根膜幹細胞(iPS-PDLSC)を1-17細胞株の代用として使用することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫染色に使用した一次抗体(VEGF,SDC1,HGF,CEMP1,OCN)および二次抗体(DAB,FITC)は申請者の所属する医局の他の医局員が既に購入していたものを使用したため、本年度新たに購入する必要が無かった。またコロナウィルス感染症の影響で、学会等がオンライン開催となったため、旅費が必要なかった。
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