研究課題
先行研究で、アメロジェニンが核内移行しヒストン修飾を誘導することで、マクロファージによる抗原提示を抑制するという現象を初めて見出し報告した。しかし、アメロジェニンが核内に移行した後、どのようなエピジェネティック制御を介して免疫抑制と創傷治癒を促進するのかは依然不明である。本研究はアメロジェニンが免疫応答や創傷治癒等に与える影響、およびそこに至るまでの分子メカニズムを解明するため、アメロジェニンの核内移行後のヒストン修飾における作用点の解明、また人為的にアメロジェニンの活性増強が可能か否かを検証する。さらにこれらの結果をもって、アメロジェニンの投与による新しい歯周組織再生療法を開発すると共に、難治性疾患の新規治療確立に向け研究の展開を図る。アメロジェニンが免疫抑制剤となり得るか否かを検討するため、Balb/cマウスからC57BL/6マウスへの皮膚移植における拒絶反応の解析を行なった。皮膚の採取(ドナーマウス)において腹腔麻酔し、バリカン・除毛クリームで胸部の腹背側を剃毛し、ハサミでマウスの胸部腹背側の皮膚全層を1x1cm2正方形状に切除。シャーレに生理食塩水を浸したガーゼ上に置き保存した。皮膚の移植(レシピエントマウス)においては、腹腔麻酔し、バリカン・除毛クリームで胸部の腹背側を剃毛。ハサミでマウスの胸部腹背側の皮膚全層を1x1cm2正方形状に切除。ドナー皮膚移植片にアメロジェニン(20マイクログラム分)またはPBSを塗布し、レシピエントの需要部に置き、皮膚移植片を縫合しない。その結果、アメロジェニンの初期塗布だけで対照群と比較して拒絶が延長する傾向が観察された。また、移植片壊死面積スコアに関しても有意に壊死面積の減少が確認された。
3: やや遅れている
Balb/cマウスからC57BL/6マウスへの皮膚移植における拒絶反応の解析を行なったところ、移植片におけるアメロジェニンの初期塗布だけで対照群(PBS)と比較して拒絶が延長する傾向があるという画期的な現象を確認したが、COVID-19の影響で実験計画に支障が出たためやや遅れているとした。
移植片におけるアメロジェニンの初期塗布だけで対照群(PBS)と比較して拒絶が延長する原因を探索するために、以下の実験を行なう予定である。① HE染色:皮膚移植10日後の移植片の組織学的変化、細胞浸潤やアポトーシスの有無を確認する。② 混合リンパ球反応(MLR):T細胞の活性化を確認するために、移植後アメロジェニンを投与した群のドナーマウスから脾細胞を採取し、ドナーマウスの脾細胞と共培養する。CD4およびCD8陽性T細胞の変化を検討する。③ フローサイトメトリーによる解析:移植されたマウスの末梢血を採取し、フローサイトメーターを用いて、T細胞表面抗原を解析する。Th1/Th2バランスなどの炎症反応を制御する調節性T細胞(T-reg)をその特異的な転写因子(Foxp3)をマーカーとして判別し、その比率を評価する。また、同種骨髄移植に関しても同様の投与法で検討する予定である。
COVID-1の影響により当初の研究計画が大幅に遅れたため次年度に繰り越し、繰越予算は研究計画の遅延を取り戻すために使用する。
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Sci Rep
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