元来歯のエナメル質の石灰化と成熟にのみ関与するはずのアメロジェニンが免疫抑制作用を有するという現象は、歯の発生時に特殊な免疫システムが作動している可能性を示唆するものであり、発生期の歯胚防御の分子機序を解明する研究の発端となるかもしれない。さらに、使用したアメロジェニンは組み換え蛋白質であり、プリオン等の未知の病原蛋白質を含まないため、生体に安全に使用できる。昨今の免疫抑制剤には重篤な副作用が認められるものが多数確認されており、将来的にアメロジェニンが臓器移植を始め、I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチなどのMHC II関連自己免疫疾患に対する安全な免疫抑制剤として応用できる可能性がある。
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