本研究の目的は、ヒト歯周組織由来血管内皮細胞を用いて糖尿病罹患患者における歯周病の病態変化に対する阻害機構を解明し、レーザー治療による歯周組織の生理活性を解明することである。第一の研究として、ヒト歯周組織由来血管内皮細胞を高血糖条件下で培養した際の病理・病態変化について検討を行った。ヒト歯周組織由来血管内皮細胞をグルコースを添加した専用培地にて培養し、細胞増殖・管腔形成・アポトーシス・炎症性サイトカインについて検討を行った。グルコース濃度は、5.5mM、11.0mM、22.0mMに設定した。第一の研究では、グルコース濃度が高くなるにつれて、細胞増殖の抑制、アポトーシス陽性細胞の増加を認めた。また、炎症性サイトカインであるICMA-1、VCAM-1の発現量が増加した。これは、グルコースを曝露されたヒト歯周組織由来血管内皮細胞は、細胞増殖能が低下し、炎症反応を誘発する炎症性サイトカインを発現させれていることが明らかとなった。第二の研究として、Nd-YAGレーザーを照射した際の、ヒト歯周組織由来血管内皮細胞の生理活性の状態について検討を行った。レーザーの出力を、40mJ、100mJ、200mJとし、照射回数を1回、3回、5回に設定した。レーザーを照射されたヒト歯周組織由来血管内皮細胞は、レーザー出力が低いほど細胞増殖が促進する傾向であった。また、照射回数が多いほど、細胞増殖が抑制された。また、レーザーの出力・照射回数が高いほど、細胞形態が変化することが明らかとなった。続いて、グルコースを曝露したヒト歯周組織由来血管内皮細胞に対して、Nd-YAGレーザーの照射を行った際の、細胞の変化について検討を行った。グルコースを曝露されたヒト歯周組織由来血管内皮細胞にレーザーを照射した結果、細胞増殖が照射しない細胞と比較し、促進することが明らかとなった。
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