研究課題/領域番号 |
21K16981
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
宮部 愛 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (70734929)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 歯周炎 |
研究実績の概要 |
慢性炎症性疾患である歯周病の存在が動脈硬化の発症や進展に関与することが報告されてきたが、その詳細な機序は明確になっていない。そこで2021年度はこれを明らかにするため、 ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMCs)を用いたin vitroの実験を行った。その結果、歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg菌)由来のlipopolysaccharide (Pg-LPS)を用いて刺激する事で、HASMCsの増殖や遊走能は有意に促進する事が明らかになった。 続いてその反応に関わる経路について検討し、LPS刺激によってHASMCsのTLR4/MyD88/NF-κBの経路が活性化されることが明らかになった。そこで、これらの経路の下流にあり、炎症性サイトカインによって活性化されるMAPKと、細胞の増殖に重要なERKのリン酸化について検討を行ったところ、Pg-LPS刺激によってHASMCsのP38MAPK,JNK、ERKが活性化することが明らかになった。 これらの研究結果からHASMCsのPg-LPS刺激による増殖や遊走能の促進はTLR4を介していると考えられたために、TLR4をノックダウンしHASMCsをPg-LPSで刺激したところ、HASMCsの増殖と遊走能は有意に抑制されることが明らかになった。このように2021年度の研究からは、歯周病の存在によって動脈硬化が促進される可能性が示唆されたといえる。また、そのメカニズムの解明が進行しているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度はヒト大動脈平滑筋細胞を用いたin vitroの実験を行った。その結果、歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg菌)由来のlipopolysaccharide (Pg-LPS)を用いて刺激する事で、HASMCsの増殖や遊走能は有意に促進する事が明らかになった。 続いてその反応に関わる経路について検討し、LPS刺激によってHASMCsのTLR4/MyD88/NF-κBの経路が活性化されることが明らかになった。そこで、これらの経路の下流にあり、炎症性サイトカインによって活性化されるMAPKと、細胞の増殖に重要なERKのリン酸化について検討をおこなったところ、Pg-LPS刺激によってHASMCsのP38MAPK,JNK、ERKが活性化することが明らかになった。 これらの研究結果からHASMCsのPg-LPS刺激による増殖や遊走能の促進はTLR4を介していると考えられたために、TLR4をノックダウンしHASMCsをPg-LPSで刺激したところ、HASMCsの増殖と遊走能は有意に抑制されることが明らかになった。これまでのところ、概ね予定通りに実験は進んでおり、これらの研究は学会にて発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度においては、昨年度の研究を継続して行い、Pg-LPS刺激によるHASMCsの増殖と遊走の促進における反応経路の詳細な解明を目指す。 続いて、マイオカインの1つであるirisinを用いて研究を行い、irisinがHASMCsの増殖と遊走に与える影響について検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会での発表や出張による参加において、2021年度は新型コロナウイルスの流行と重なったために、ほとんどの学会がオンラインやハイブリッド形式での開催となり、実際に学会会場へ出張したのは地元で開催された歯周病学会のみであった。このために出張の為の支出がなくなったのでその分の費用が残金として残った。 これらの残金については、実験開始時より使用してきたHASMCsを予想以上に使用しており、現在ではストックが少なくなってきているので、新規にHASMCsを購入し、さらにその培養の為の試薬や追加実験使用するELISAキットを購入すると20万円を少し超える金額となるのでそのための費用として使用したい。
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