研究実績の概要 |
歯周病原細菌であるPorphromonas gingivalis(Pg菌)由来のLPS(Pg-LPS)による刺激でヒト大動脈平滑筋細胞HASMCsの増殖と遊走が促進する事を明らかにした。また、その細胞内シグナルにはTLR4/MyD88の経路の活性化とその下流のMAPKの活性化が関連する事を明らかにした。これらの研究成果を2021年10月に開催された糖尿病合併症学会及び日本歯周病学会で発表した。 さらに、TLR4の遺伝子ノックダウンによってPg-LPS刺激によるHASMCsの増殖と遊走が抑制されることを明らかにし、その成果を2022年7月の第54回日本動脈硬化学会総会及び第100回愛知学院大学歯学会総会で発表した。 この後さらに研究を継続し、TLR4の遺伝子ノックダウンによってp38,SAPK/JNK,ERKのリン酸化が抑制されるが、TLR4の下流分子であるMyD88の遺伝子ノックダウンによってp38,SAPK/JNKはリン酸化が抑制されるものの、ERKのリン酸化は抑制されないことを明らかにした。また、p38,SAPK/JNKの阻害によってHASMCsの遊走は抑制されるが増殖は抑制されないことやERKの阻害によってHASMCsの増殖と遊走が抑制されることを明らかにした。これらの研究成果をまとめて2022年12月に論文として発表し、International Journal of Molecular Sciencesに掲載された。最終年度はマイオカインの一つであるIrisinを用いてそれまでの研究で明らかになったPg-LPS刺激によるHASMCsの増殖や遊走に対するIrisinの効果について研究を行った。その結果、Irisinの投与により、Pg-LPS刺激によるHASMCsの細胞増殖と遊走がIrisinの濃度依存性に抑制されることを明らかにした。
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