研究課題
歯根膜は歯周組織の恒常性の維持において中心的な役割を担う最も重要な組織の一つである一方、直接的に咬合力を受ける組織である。咬合性外傷は、細菌存在下において急速に重症化し、著明な骨吸収をきたすことが知られているが、明確なメカニズム同定には至っていない。申請者は歯根膜細胞における細菌感染と咬合性外傷進行に注目し、歯根膜細胞と骨構成細胞のクロストーク機構の解明を目的とした。本研究では、伸展培養による機械的刺激存在下において、LPSを添加した歯根膜由来線維 芽細胞の遺伝子発現の変化をRNAシーケンス (RNA-seq) を用いて網羅的に探索する。候補遺伝子のノックダウンを行った歯根膜由来線維芽細胞と骨構成細胞との共存培養系において クロストーク因子の解明に迫る。また、咬合性外傷モデルと歯周炎・咬合性外傷併発モデルとを作成し、網羅的解析にて示唆された炎症、機械的刺激存在下において発現上昇する因子について形態学的解析、分子生物学的解析手法を用いて生体での機能を比較検討する。対照群、歯周炎群、咬合性外傷群、歯周炎・咬合性外傷併発群の歯肉、歯槽骨サンプルよりRNAを抽出し、RNA-seq解析を行なったところ、多くの発現変動遺伝子を認め、破骨細胞分化亢進、炎症、免疫応答の変化を示唆する結果が得られた。このことから、今後in vitroの系を用いて、細胞種における遺伝子発現を確認し、咬合性外傷による歯周組織破壊因子、細胞間の相互メカニズムを探る。
3: やや遅れている
歯周炎モデル、歯周炎咬合性外傷モデルの作出、実験の実施は進んでおり、in vivoにおけるRNA-seq解析を行なっている。しかし、in vitroの系については条件検討中であり、進行が遅れている。
今後、in vitroの系の条件が定まり次第実験計画に基づき、RNA-seqによる網羅解析を遂行していく。その後、歯槽骨吸収の責任分子となりうる因子の同定のためノックダウンなどによる遺伝子機能解析をおこなっていく。最終的にin vivoにおける発現の確認を免疫染色等を用いて実施していく予定である。
in vitro系の条件検討に時間がかかり、in vitroにおけるRNA-seq解析とその先の分子生物学的実験が実施的なかったため。今後、RNA-seqにて同定した遺伝子の機能解析など計画通りに実験を行なっていく予定である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
Frontiers in Cellular and Infection Microbiology
巻: 11 ページ: 1-15
10.3389/fcimb.2021.745117
Photobiomodulation, Photomedicine, and Laser Surgery
巻: 39 ページ: 566~577
10.1089/photob.2020.4958
巻: 10 ページ: 1-12
10.3389/fcimb.2020.580577
International Journal of Molecular Sciences
巻: 22 ページ: 8900~8900
10.3390/ijms22168900