歯肉線維芽細胞株と歯肉上皮細胞を用いた歯肉モデルと被験者から採取したin situデンタルバイオフィルムを共培養し、共培養後の歯肉モデルおよびin situデンタルバイオフィルムをそれぞれ解析した。 歯肉モデルに関しては、in situデンタルバイオフィルムと共培養した共培養群と歯肉モデルのみを培養した単独培養群を比較し、リアルタイムPCRによる遺伝子発現評価と組織学的評価を行った。リアルタイムPCRの結果、IL-6は,共培養開始後1 時間から24時間の実験期間において,共培養群で経時的に増加したが共培養群と単独培養群の間で有意差はなかった。また,TNF-αでは,共培養開始後,1時間後に単独培養群に比べ共培養群において有意に増加した。組織学的評価の結果、各時間において,単独培養群に比べ共培養群で歯肉上皮細胞層の肥厚が観察された。 in situ デンタルバイオフィルムに関しては、歯肉モデルと共培養した共培養群とバイオフィルムサンプルのみを培養した単独培養群を比較し、リアルタイムPCRによる総菌数測定、共焦点レーザー顕微鏡観察、16SrRNAシーケンス解析(細菌叢解析)を行った。総菌数測定の結果、細菌数は経時的に増加するが各時間で2群間に有意な差を認めなかった。共焦点レーザー顕微鏡観察の結果,生菌,死菌,菌体外多糖は,各時間において共培養群と単独培養群の間に統計学的な有意差はなかった。細菌叢解析の結果、属レベルでは,共培養開始後,12時後に,単独培養群に比べ共培養群において,Rothiaの割合が増加した。さらに,12時後に単独培養群に比べ共培養群において,Fusobacteriumの割合が減少を示した 。本研究の結果により,歯肉モデルがデンタルバイオフィルムに影響し細菌叢の組成に変化を与えることが新規に示された。
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