研究課題
近年の晩婚化に伴い,不妊治療を希望する患者数が増加している。不妊の要因として,年齢や男女の生殖機能の異常等が挙げられるが,原因がはっきりとしないケース(原因不明不妊症)も存在する。最近,口腔疾患である歯周病の原因細菌(Porphyromonas gingivalis等)の感染,そして,歯周組織に惹起された炎症が妊娠の成立に悪影響を与える可能性が報告され,不妊の新たなリスクファクターとしての歯周病の可能性が提唱されはじめている。しかし,不妊と歯周疾患の関連性を検討した基礎研究報告はほとんどなく,そのメカニズムは未だ不明な点が多い。本研究では,絹糸結紮歯周炎マウスモデルを用いて,不妊のメカニズムに歯周感染・炎症が及ぼす影響を免疫学的視点から検討した。そして,歯周感染・炎症の制御が原因不明不妊の病態を改善する可能性を検証した。本年度は,マウスモデルを用い,出産数,新生児マウス体重,妊娠期間を比較した。又,妊娠前の子宮の免疫学的変化と組織学的変化の比較を行なった。歯周炎マウスにおいて,①新生児出産数の減少、②不妊母体数の上昇、③新生児体重の減少を確認した。また、歯周炎マウスにおいて、①子宮における制御性T細胞の比率の上昇、②子宮組織の細菌量の上昇を確認した。以上の結果から,歯周感染・炎症が子宮に炎症を惹起し,不妊を誘発する可能性が示唆された。今後は、さらに歯周感染及び炎症が子宮に及ぼす悪影響のメカニズムを解明するため、分子生物学的手法を用いて解析していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
絹糸結紮歯周炎マウスモデルにおいて,不妊と子宮内膜の炎症が確認され,歯周組織の感染・炎症が,子宮内膜組織に炎症を惹起し,不妊を誘発する可能性が示唆されたから。
今後は,以下の事柄を検討し、歯周組織の炎症・感染が不妊を誘発するメカニズムの解明を目指す予定である。免疫学的解析(リアルタイムPCRを用いた,マウス歯肉と子宮組織における炎症性サイトカイン量の比較)組織学的検討(免疫組織染色を用いた,マウス歯肉と子宮組織におけるTreg数の比較)細菌学的検討(リアルタイムPCRを用いた,マウス歯肉と子宮組織における細菌感染量の比較)
COVID-19感染拡大に伴い、予定していた実験の試薬の納入等に時間を要し、計画していた実験の実施に若干の遅延が生じた。次年度は引き続き予定していた実験の実施ならびに解析を継続する。
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