本研究では、Decorinの歯周組織再生能を有する新規の細胞外マトリックスとして着目し、その歯周組織再生に関わる影響を解析していった。まず、in vitroにおいて、当研究室において樹立した歯根膜幹細胞株(PDLSCs)を用いて、その増殖、遊走、分化に及ぼす影響を検討した。その結果、Decorinにてコーティングされたディッシュ上で培養されたPDLSCsにおいては、その骨芽細胞様分化が促進される一方で、増殖、遊走、および歯根膜関連因子の発現には影響を及ぼさなかった。以上の結果より、DecorinはPDLSCsの骨芽細胞様分化を促進することで、歯槽骨の再生に寄与している可能性が示唆された。 次に、in vivoにおいて、当研究室で樹立されたラット歯周組織傷害モデルを用いて、その歯周組織再生時のDecorinの発現様式を解析した。その結果、炎症期から組織再生期への移行期においてその発現が強く上昇することが明らかとなった。また、炎症性サイトカインによって刺激された歯根膜細胞においてDecorinが産生されることからも、Decorinが歯周組織再生において重要な役割を担っていることが推察された。 上記の内容に関して、Moleculesに「Decorin Promotes Osteoblastic Differentiation of Human Periodontal Ligament Stem Cells」というタイトルで、2022年11月に論文発表を行った。また、2022年6月には、第156回日本歯科保存学会学術大会にて、「Decorinによるヒト歯根膜幹細胞の骨芽細胞分化誘導に関する分子機構の解明」という演題でポスター発表を行った。
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