研究課題/領域番号 |
21K16997
|
研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
笠井 信吾 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (30878286)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 歯周炎 / GCF / マルチプレックスイムノアッセイ / サイトカイン |
研究実績の概要 |
歯肉溝滲出液(GCF)は歯周ポケットに存在する組織液である。歯周炎患者から採取したGCFには炎症性サイトカインが含まれ、歯周組織局所の炎症状態を反映することが知られている。miRNAは小分子RNAであり、癌をはじめとした疾患のマーカーとなることが示されている。GCF中にも様々なmiRNAが含まれていることが明 らかとなったが、歯周炎の病態、並びに歯周炎の治療反応性との関連は不明である。本研究では、歯周炎患者のGCFに対して、NGS(次世代シーケンサー)を用いて、miRNA発現プロファイリングを網羅的に解析し、歯周炎病態や歯周基本治療に対する反応性に関わるmiRNA発現を明らかにし、さらに、炎症性サイトカイン発 現に対する制御機構を検証することである。 令和4年度は、採取したGCFサンプルよりRNA抽出を行い、RNAよりmiRNAをターゲットとしたRNA-Seq解析をトライアルで実施した。miRNAについてはGCF中から得られるもので解析可能なクオリティであることは確認できたが、歯肉溝由来のものであるか、あるいは口腔内細菌由来のものであるかの判別が課題となった。そこで研究プロトコールおよび解析対象の見直しおよび修正を行った。九州歯科大学附属病院歯周病科に初診で来院した患者のうち、糖尿病の既往のある患者から歯周病の新分類ステージBの患者を対象とした。糖尿病の状態が修飾因子となりステージングに修正が入る患者のGCF中の炎症性サイトカイン解析をマルチプレックスイムノアッセイにて行うこととした。令和4年度はGCF採取時にペリオトロン8000を用いてGCF量の測定を含めた新たなGCFサンプル採取を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画の修正を行った。 2023年度は採取したGCFサンプルからRNAを抽出し、そこからmiRNAに関してSeq解析を行い、クオリティチェックを行った。遺伝子発現は解析を進める値する量を確認できたが、遺伝子発現がGCF由来であるか、微小なプラーク由来のものであるか、あるいは血清由来であるかを同定することが困難であると判断した。そこで過去の報告で一定の結果が示されているサイトカインについて、歯周炎の新分類におけるグレーディングの修飾因子という新たな着目点から、マルチプレックスイムノアッセイを用いたサイトカイン量の郡間比較検討を行うこととした。再度、研究計画を修正したため、研究対象者の包括基準が変更になり、進捗に遅れが出ている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初、歯周基本治療の治癒反応性に応じた比較解析を予定していたが、歯周炎の新分類におけるグレーディングについて、修飾因子となる糖尿病患者のHbA1c値に着目した解析を行うことに研究計画を変更した。具体的にはグレーディングについて客観的な診断に貢献しうるバイオマーカーの探索を目的とし、初診時にグレードBと診断された歯周炎患者を対象に①HbA1c 7%未満のグレードB患者、②HbA1c 7%以上の修飾因子を根拠にグレードCと診断された患者、③コントロールとして喫煙(1日10本以上)歴の修飾因子を根拠にグレードCと診断された患者の複数のサイトカイン量の群間比較を行う。 今後は採取したGCFに対して、ペリオトロンを使用してGCF量を測定、その後タンパクを抽出し、マルチプレックス解析による網羅的解析を行い、統計学的分析まで行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の修正により、研究対象者の再度リクルートを行った。これによりサンプルの採取、解析に追加施行が生じた。2023年度に予定していたSeq解析ために確保していた解析費用をマルチプレックス解析に充てるため、繰り越すこととなった。 次年度は研究計画に修正により、新たに採取したサンプルに対するマルチプレックス解析費用を主としてその他、学会発表、論文発表の費用が必要となる。
|