研究課題
本研究では、歯周病がSARS-CoV-2感染リスクを高めるのかという学術的な問いに応えるために歯周ポケット上皮におけるSARS-CoV-2感染に必須分子の発現動態について分子生物学的に明らかにすることを目的とする。1)歯周ポケット上皮におけるACE2、TMPRSS2、Furinの局在を明らかにした。慢性歯周炎または歯周外科手術の同意を得られた患者より切除された歯肉の一部である歯周ポケット歯肉を採取し、4%パラホルムアルデヒドで17時間固定後、パラフィン包埋し、免疫組織化学染色を行った。ACE2の免疫組織化学的局在は基底細胞から棘細胞に至る全層にわたり認められた。TMPRSS2も同様の局在を示した。Furinは、主に基底細胞から棘細胞の下層中心に認められた。2)歯肉上皮細胞における新型コロナウイルス感染の可能性を明らかにした。偽ウイルス実験系としてPseudo Host/Pseudo SARS-CoV-2 BacMam System(Mpntana Molecular社製)を用いる。このシステムでまず、歯肉上皮培養細胞にACE2を発現させ、偽型宿主細胞を用意した。次に偽型SARS-CoV-2(S蛋白を含んだBacMamベクター)を培養液に添加し、歯肉上皮細胞に侵入するかを蛍光で確認したが蛍光量は微弱だった。この理由は導入遺伝子量の問題があったと思われ、今後、導入遺伝子量の検討を行う予定である。
4: 遅れている
ヒト歯肉培養細胞(ATCCより購入)にACE2の遺伝子発現が弱かったため、ACE2遺伝子導入を行ったところ、細胞死が誘発され、その後の偽ウイルスアッセイで十分な遺伝子が導入されなかった。
今後、ACE2が発現している歯肉培養細胞を選んで実験を行う。あるいは遺伝子導入量の予備試験を行い至適濃度を検討することで解決する予定である。また、歯肉培養細胞を用いた炎症性サイトカインによるACE2の発現の変動については適切な培養条件あるいは適切な培養細胞の選定後進める予定である。
令和3年度の研究計画の遅れに伴い、その未実施の計画を実施するために次年度使用額が生じている。令和4年度は歯肉培養細胞を用いた炎症性サイトカインによるACE2の発現の変動を検討する予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Oral Health Prev Dent
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