研究課題/領域番号 |
21K17011
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
楢原 峻 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (50827615)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨再生 / 核酸医薬品 / GAM |
研究実績の概要 |
【研究の背景と目的】骨再生医療において、骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)や線維芽細胞、マクロファージ、血管内皮細胞などの細胞が重要な役割を果たしていることが知られている。近年、これらの細胞の機能を調節するmicroRNA(miRNA)に注目が集まっている。本研究では、骨形成に関与するmiRNAの同定とその応用を目的とし、骨再生を促進する新規の遺伝子活性化マトリックス(GAM)の開発を目指した。【方法と結果】まず、骨形成に関与するmiRNAの候補として、miR20aに着目した。化学修飾を施した一本鎖miR20aを作製し、MSC、線維芽細胞、マクロファージ、血管内皮細胞への導入効率と細胞特性の変化をin vitroで評価した。その結果、miR20aの導入により、これらの細胞の骨形成関連遺伝子の発現が増加し、骨形成能が向上することが明らかになった。人工骨基質であるオクタリン酸カルシウム/コラーゲン(OCP/Col)に吸着させ、凍結乾燥することで新規GAMを作製した。ラット頭蓋骨欠損および増生モデルにおいて、作製したGAMを移植し、骨再生に対する有効性を評価した。その結果、miRNAを搭載したGAMは、miR20aをコードするplasmid DNAを基質に取り込ませた場合と比較して、より低用量の核酸で高い骨誘導能を示した。【結論】本研究では、骨形成に関与するmiRNAを同定し、それらを搭載した新規GAMの開発に成功した。化学修飾を施したmiRNAを用いることで、低用量でも高い骨誘導能を発揮し、オフターゲット効果を抑制できることが示された。今後、このGAMの臨床応用に向けて、さらなる安全性と有効性の検証が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、骨再生医療の発展に向けて、microRNA(miRNA)に着目し、新規の遺伝子活性化マトリックス(GAM)を開発することであった。研究開始から現在までの進捗状況は概ね順調であり、当初の計画に沿って研究を遂行している。 まず、骨形成に関与するmiRNAの候補として、miR20aを同定した。化学修飾を施したmiR20aを骨髄由来間葉系幹細胞や線維芽細胞、マクロファージ、血管内皮細胞に導入し、これらの細胞の骨形成能に与える影響を評価した。その結果、miR20aの導入により、骨形成関連遺伝子の発現上昇と骨形成能の向上が認められた。 次に、miR20aを化学修飾し、人工骨基質に吸着させることで新規GAMを作製した。動物実験により、miR20aを搭載したGAMの骨誘導能を評価した結果、低用量の核酸で高い骨誘導能を示すことが確認された。また、化学修飾を施したmiR20aを用いることで、オフターゲット効果の抑制と高い骨誘導能の発揮が可能であることが明らかになった。 現在、開発したGAMの安全性と有効性をさらに検証するための実験を計画通りに進めている。これまでの結果は当初の予想に沿ったものであり、今後の研究の進展により、骨再生医療の発展に寄与できる可能性が高いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、これまでに得られた研究成果をまとめ、論文化を進めているところである。研究結果は、骨再生医療の発展に大きく寄与するものと考えており、速やかに学術誌への投稿を予定している。また、国内外の学会においても、本研究の成果を報告する予定である。 今後は、開発したGAMの安全性と有効性をさらに検証するための実験を継続し、臨床応用に向けた基盤を確立していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画は概ね順調にすすんだが、報告や論文が遅れており、英文校正費用、論文投稿代の費用を次年度に繰越す計画とした。
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