光は生体に様々な影響を与え,医療の場で応用されている。歯周病学の領域で応用されている抗菌的光線力学療法の光源としての赤色LEDを用いて,宿主細胞を活性化することで歯周組織再生療法へ応用することを目的に研究を行っている。この領域はPhotobiomodulationと呼ばれ発展してきたが,そのメカニズムについては明らかにされていない。そこでメカニズムの一つとして赤色LED照射がミトコンドリア呼吸鎖複合体へ与える影響を検討した。 ヒト抜去歯よりメスにて歯根膜組織を採取し,酵素処理を行い,ヒト歯根膜幹細胞の分離を行った。至適エネルギー量を策定するために赤色LED照射のヒト歯根膜幹細胞の増殖能への影響を調べ,8 J/cm2で最も促進した。さらに遠心機を用いた分画遠心法により,ミトコンドリアの単離を行った。そして単離ミトコンドリアに対し,8J/cm2でLED照射を行い,ミトコンドリアの呼吸鎖複合体Ⅳの活性測定を行った。LED照射を行うことで,ミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅳの活性は有意に促進した。ミトコンドリアのATP合成阻害剤であるシアン化カリウムを用いてLED照射によるミトコンドリア活性への影響を検討し,シアン化カリウムによりLED照射による増殖能の増加は有意に抑制された。 以上の結果より,ミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅳを活性化させることにより,LED照射はヒト歯根膜幹細胞の増殖能を促進することが示唆された。
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