顎骨の再生治療において広範な骨欠損の再生はいまだ大きな課題である。大規模骨欠損の再生における課題の一つは血流の確保である。近年マクロファージの極性を制御することで組織修復を促進することが報告されており、制御の方法の一つとして生体材料の表面性状の調整が挙げられる。 本研究では、顎骨再建において頻用される材料であるチタンに着目しチタン材料の表面処理により付着したマクロファージの活性化を制御することで、効率的な血管網の構築を目指すことを目的とした。 in vitroの実験において、チタン表面処理の条件を変え、材料上で培養したマクロファージの極性マーカーの変化、血管新生に及ぼす影響について検討を進めた。チタン表面の処理として簡便に実施可能な機械研磨と酸処理との比較を行った。チタン表面構造の変化の観察をおこなったうえで、マクロファージとしてTHP-1細胞を分化させたものを用いて材料表面上で培養し経時的な極性マーカーおよび血管新生関連遺伝子の発現の変化を解析した。 結果として処理後のチタンでは未処理のものと比較してマクロファージの極性マーカーがM2に近いものへ変化し、血管新生因子の遺伝子発現の経時的な変化が異なることを明らかにした。一般に骨形成については向上する酸処理群において血管新生因子の発現は低下する傾向が見られた。 材料上で培養したマクロファージの培養上清を添加した培地でヒト臍帯静脈内皮細胞培養を行うと、ポジティブコントロールと比較し機械研磨のみの場合は同等の血管新生を示したが、酸処理群では遺伝子発現と同様に血管新生は有意に低下した。チタン処理条件のさらなる検討、骨形成との関連についての解析が必要である。
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