研究代表者は新たな細胞ソースとしてヒト臍帯動・静脈周囲に存在する間葉系幹細胞(以下HUCPVCs)に注目している。これまでの研究でHUCPVCsをヒト骨髄幹細胞の培養上清(以下BM-CM)で培養することで骨形成が増加した。さらにBM-CMを採取する際、骨髄幹細胞が70%コンフルエントから石灰化ノジュール形成するまでの期間のBM-CMでHUCPVCsを培養することにより効果的に骨形成が増加することを確認した。本研究では臨床応用を見据え無血清培地を用い、HUCPVCsを分化・誘導後実験動物に移植し、骨形成量を分析し、骨伝導能と骨誘導能を有する細胞としての新規の骨再生療法の開発を目的とした。 令和3年度はHUCPVCsをより効果的に骨系へと分化させるために、再度最適なBM-CM採取期間について検討した。BM-CMを3つの期間にわけてHUCPVCsに添加した。タイムポイントは1・2・3週としてALP染色、Alizarin Red染色を評価方法とした。BM-CMの3つの期間の検討では、コンフルエント期は他の時期よりもALP染色、Alizarin Red染色での陽性反応が明らかであった。 この結果をふまえて、in vivoで分化させた細胞が骨再生への影響について検討することとした。足場としてコラーゲンスポンジを用いて各細胞を1週間培養し移植試料とした。骨欠損モデルとしてラット頭蓋骨に骨欠損を作製し移植した。移植後4週でμ-CTによる解析とHE染色による組織学的観察を行った。移植4週間後のμ-CT画像でもコンフルエント期のBM-CM で培養したHUCPVCsは骨欠損領域に不透過像を認めた。HE染色像では骨欠損領域に骨芽細胞を伴った骨梁様組織が確認された。 コンフルエント期のBM-CMを用いることにより、ヒト臍帯組織間葉系幹細胞は骨芽細胞へと分化し骨再生能を有することが示された。
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