研究課題/領域番号 |
21K17031
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
佐藤 平 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (80866715)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生体吸収性骨補填材 / インジェクタブル骨ペースト / 抗菌性 / 水酸アパタイト/コラーゲン / (3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン / ゲンタマイシン |
研究実績の概要 |
本研究では、生体吸収性(バイオリゾーバブル)のあるペースト状人工骨の開発、特に手術部位感染(SSI; Surgical Site Infection)の予防に着目した「抗菌性バイオリゾーバブルペースト状人工骨」の開発を目指し、その抗菌性とその持続性を評価することを目的としている。 具体的には、水酸アパタイト/コラーゲン骨類似ナノ複合体 (HAp/Col) と(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン (GPTMS) からなるHAp/Col-GPTMSペースト状人工骨に抗生物質であるゲンタマイシン硫酸塩 (GNT)および抗菌性元素として銀の導入を計画しており、今年度はHAp/Col粉末へのGNT吸着処理および GNT吸着HAp/Col粉末を用いたHAp/Col-GPTMSペーストの物性評価を行った。 GNTの導入手法の検討を検討し、GNTを溶解させた生理食塩水にHAp/Col粉末を浸漬することで、HAp/ColへGNTを吸着させた。さらに、既報のHAp/Col-GPTMSペースト作製の最適条件に従い、GNT吸着HAp/Col粉末を用いたペーストの調製を行なって、その粘稠性および硬化挙動を評価した。 HAp/ColへのGNT吸着処理では、HAp/Colへの吸着量がGNT吸着処理液である生理食塩水中のGNT濃度に依存することが明らかになった。一方で、GNT濃度の増加に伴い、処理液のpH低下が起こり、吸着処理後のHAp/Col粉末の粒子径が小さくなる様子が観察された。GNT吸着HAp/Col-GPTMSペーストの物性評価では、従来のHAp/Col-GPTMSペーストの物性と比較して粘稠性や硬化挙動に有意な違いが認められず、従来のHAp/Col-GPTMSペーストと同程度の物性を有していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で用いるHAp/Colは、外部機関にて合成を行うことを予定していたため、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響で出張が困難な状況が続き、材料不足による進捗の遅れが生じた。また、GNTの定量に関して、適用できると考えていた従来法ではHAp/Colに吸着したGNT量を正確に測定できないことが示唆されたため、その原因の特定と定量方法の最適化に予定外の時間を要した。結果として、計画していた銀担持HAp/Col粉末の調製手法の検討が十分に行えていない状況のため「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
一次保存 2021年度後半である程度まとまった量のHAp/Colの合成を行うことができた。そのため、2022年度前半は、すでに合成したHAp/Colを用いて、HAp/Col粉末への銀担持手法の検討を進める予定である。銀担持手法と担持量の定量方法が確立でき次第、銀担持HAp/Colペーストの力学的特性評価を行った後、GNT担持HAp/Colペーストおよび銀担持HAp/Colペーストの生物学的評価を同時に並行して進めていくことを計画している。 また、追加のHAp/Colの合成も計画しているが、出張することが難しい状況が続く場合には、HAp/Colの合成設備導入の検討を行う。
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