研究課題/領域番号 |
21K17050
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
鈴木 亜沙子 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (80822642)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 舌圧 / 機能的咬合高径 / 快適域 / 口腔機能 |
研究実績の概要 |
加齢に伴う歯の欠損に起因する口腔機能低下において,有床義歯による機能回復は重要である.しかし,義歯製作段過程の適否から治療後の口腔機能回復について検討・評価された報告はない.特に製作過程の中でも咬合高径決定は完成義歯の機能に大きく関わるステップであり,舌圧などの口腔機能に影響を及ぼす.そのため,本研究は,快適域(Comfortable Zone: CZ)と舌圧を応用した客観的な咬合高径決定法を確立することを目的とし立案した. 本研究の計画は①CZが妥当な咬合高径領域を示しているかの予備的実験,②CZの測定と舌圧の比較,③CZと舌圧を用いた咬合高径決定法を利用した新製義歯での口腔機能の評価,とし現在,①②までの研究結果を論文として投稿,受理された. 令和3年度の報告からCZと使用義歯の咬合高径は必ずしも一致していなかった.そのため基準の咬合高径を模索するためCZ法より導出される最快適位(Most Comfortable Position: MCP)を利用することとした.MCP導出の再現性を検討するため,CZ法で用いる3件法の“高い・低い・快適”と答えた咬合高径におけるそれぞれの100mmVAS (Visual Analog Scale, 以下 VAS) の変化について分析した.結果は3件法の“快適”回答時は“高い・低い”の回答時よりVASの快適性は有意に高く,MCP導出の再現性を確認した. 続いて,咬合高径をMCPから変化させた時のVAS・舌圧の変動について検討した.MCPより-2mm以下,+3mm以上でVASの快適性は有意に減少した.これより,患者の快適性を参考に咬合高径を設定する場合はMCPより-1~+2mmの範囲が有用であることが示唆された.舌圧はMCPを基準に+6mm以上で有意の低下を認め,舌圧を参考に咬合高径を設定するには+5mmまでの範囲が有用であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画2年を終えた段階で①CZが妥当な咬合高径領域を示しているかの予備的実験,②CZの測定と舌圧の比較の測定,分析,論文投稿が完了している. ①の内容では昨年の報告より,CZが使用義歯の咬合高径と一致していないことが明らかになり,咬合高径を増減させるための基準とする咬合高径の検討が分析に追加された。しかし,CZから導出されるMCPがVASの値との比較分析より再現性のある方法であることが明らかとなり,直ちにその後の測定分析にとりかかることが可能となった. 分析内容は,当初予定していた②の咬合高径を変化させた時の舌圧の変化の検討に加え,VASの変動の分析も追加で検討することができた.2つの内容は既に論文にて受理が決定している.
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今後の研究の推進方策 |
研究進行度は順調であり,既に①②の計画を網羅はしているが,研究参加者を増加させた追加の分析も必要と考え行う予定である.また,MCPを基準とした咬合高径の適否を多方面から検討する必要があり,既存の決定法との比較を行う予定である.測定内容として,セファログラフィックによるLFH,顔面計測法を予定している. これらと同時に既に報告済みの舌圧を低下させずに咬合高径を設定できるMCP基準の-4mmから+5mmの範囲で製作した義歯を装着し口腔機能を測定する予定である。これを通法の決定方法で製作された義歯装着時の口腔機能の状態回復度と比較検討を行っていく予定ある.測定内容は舌圧の他,咀嚼能率と嚥下機能を予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年報告したMCP導出方法を咬合高径の評価として今後測定分析方法に利用する予定である.そのため咬合高径の多角的評価及び,現義歯の咬合高径の評価を行う必要があり,顔面測定の記録をするためのカメラと,LFH測定目的にセファログラフィック解析用ソフトを必要とした.しかし,本年度の予算残額を上回るため,次年度の予算と合計して申請、購入し,測定を次年度行うこととした.
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