研究課題
顎骨欠損の再建には, 患者自身の自家骨と金属プレートを用いて再建手術を行うのが一般的であるが採取できる骨量の限界、採取部位の二次的損傷や感染のリスクが問題となる.この問題を解決するためには、ハイドロキシアパタイトなどの人工骨使用が検討されるが,強度不足や術後感染なども問題視される.近年、様々なナノ粒子がドラッグシステムなどに応用される研究が盛んに行われており,申請者らも主要なインプラント材料の一つである純チタン金属に低温化学合成法により合成される酸化チタンナノチューブ(TNT)を利用した研究を推進してきた.そこで,本申請研究では,TNTにインプラント埋入周囲組織の歯周組織の再生方法としてエムドゲインの主要タンパク質の一つであるアメロジェニンをドープすることで,インプラント埋入周囲組織の硬組織分化誘導および上皮の緊密性確保を進め,新規骨補填材の開発を目指す.TNTを骨補填材として応用するため,同志社大学との協力の下,TNTのゲル化に臨んだ.そこで,骨補填材として応用予定の新規ゲルがラット骨髄細胞の硬組織分化誘導能にどのような影響を与えるのかin vitroおよびin vivo両面から検証した.ゲルはコラーゲン,グリセリン,プルラン,水を使用したものとし,本材料に昨年度決定した濃度のTNTを含有させた.実験には,生後9週齢雄性SDラット3匹を使用した.皮膚を切開し,頭蓋骨を露出した後,トレフィンバーで頭蓋骨に窩洞(d=9㎜)を形成した.対照群の窩洞は無填入で,実験群の窩洞にゲルを填入した.埋入3週後にラットを安楽死させ,頭蓋骨を採取した.採取した頭蓋骨のマイクロCT撮影を行い,骨形成能の定量解析を行った.マイクロCT解析により埋入周囲組織の新生骨の形成を三次元的に評価したところ,実験群において,骨形成量が有意に高いことが明らかとなった.
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
The Journal of Japan Association of Oral Rehabilitation
巻: 35 ページ: 1-11