研究課題/領域番号 |
21K17057
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宍戸 駿一 東北大学, 歯学研究科, 助教 (20850613)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヒドロキシルラジカル / 芽胞 / 殺菌 / 高水準消毒薬 |
研究実績の概要 |
2021年度は,芽胞形成菌であるBacillus cereusを使用して,細菌芽胞形成手法の確立を目指し,実験を実施した.まずは,BHI液体培地を使用し37℃で前培養を行い,24時間以内に芽胞形成用寒天培地(Schaeffer's sporulation medium agar)へ播種した.37℃で培養を継続しながら,1日ごとに芽胞形成率を確認した.芽胞の確認は,位相差顕微鏡による観察と,Schaeffer-Fulton染色による観察を併用して行った.染色後の観察は,毎回1,000個以上の細菌を対象とし,芽胞形成培地で培養開始後,最短5日間で芽胞形成率が90%を超えた.しかしながら,芽胞形成に要する日数については,結果のばらつきが大きいため,最適な培養日数についてさらなる検討が必要である.また,培養後に集菌した細菌芽胞懸濁液を殺菌試験等,他の実験で使用する前に,栄養型細菌を取り除く方法について検討した.先行研究を参考に,Lysozyme(2mg/ml),EDTA(0.1M),熱処理(80℃, 15分間)の条件を試したところ,80℃で15分間処理することで,細菌芽胞をほとんど殺菌することなく,栄養型細菌の生菌数を5 log以上減少させることができた.得られた細菌芽胞を使用して,走査型電子顕微鏡による形態観察を行った.さらに,細菌芽胞の懸濁液に対して,3%過酸化水素の存在下で波長400 nmのLEDを放射照度1000 mW/cm2で照射し,殺菌試験を行った.その結果,15分の処理でB. cereus細菌芽胞の生菌数を5 log以上減少させることが分かった. 今後は,殺菌試験の再現性確認を行うとともに,照射するLEDの波長や放射照度を変えながら,効率的な殺菌条件を検討する.また,走査型電子顕微鏡観察で殺菌処理後の細菌芽胞を観察し,殺菌処理による構造変化を視覚的に確認する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた細菌芽胞培養手法の確立,殺菌試験,走査型電子顕微鏡観察を行うことができた.細菌芽胞を形成させるのに必要な培養日数については,さらなる検討が必要であるが,おおむね順調に進められている.
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今後の研究の推進方策 |
まず芽胞形成に必要な培養日数について,再度最適な日数を検討する.また,Bacillus cereusの芽胞に対する殺菌効果の再現性を確認するとともに,照射するLEDの波長や放射照度を変えながら,効率的な殺菌条件の検討を行う.さらに,当初の予定通り,透過型電子顕微鏡による観察,ESR測定,HPLC測定を行い,殺菌作用機序の解明を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
複数の国内学会参加のための旅費を計上していたが,参加した全ての学会がオンライン開催となったため,旅費を使用しなかった.また,研究は計画通り進んでいるが,実験手法の確立を優先し,まずは当初の予定よりも少ない菌種での実験を行っているため,細菌用の培地や消耗品にかかる費用も少なくなった.次年度は,複数の菌種を使用することを計画していおり,次年度使用額は必要な培地や消耗品を購入する費用として使用する.また,国内外の学会で,得られた成果を積極的に発表する.
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