研究課題/領域番号 |
21K17057
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宍戸 駿一 東北大学, 歯学研究科, 助教 (20850613)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヒドロキシルラジカル / 芽胞 / 殺菌 / 高水準消毒薬 / TEM / ESR |
研究実績の概要 |
2021年度に、Bacillus cereusの細菌芽胞に対する殺菌試験を行い、波長400 nmのLEDを放射照度1000 mW/cm2で照射することにより、15分間で5 log以上の生菌数減少を示した。2022年度は、LEDの波長や放射照度を変えて殺菌試験を行った。まずBacilus cereusの細菌芽胞に対し、3%過酸化水素の存在下で波長365 nmのLEDを放射照度1000 mW/cm2で照射した結果、10分間で生菌数が約5 log減少した。また、波長400 nmで放射照度を335 mW/cm2にした場合、生菌数の減少は15分間で3 log未満であった。これらの結果から、波長365 nmかつ放射照度1000 mW/cm2の条件で効率的に殺芽胞効果が得られることが示された。また、栄養型細菌に対する殺菌試験を実施した。3%過酸化水素の存在下で波長365 nmまたは波長400 nmのLEDを放射照度1000 mW/cm2で照射したところ、光照射時間依存的かつ波長依存的な殺菌効果を認め、波長365 nmでは30秒間で5 log以上の生菌数減少を認めた。次に、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた細菌芽胞の観察を行った。まずは、観察試料作製の手順を確立し、正常な細菌芽胞の観察像を得た。今後は殺菌処理後の細菌芽胞のTEM観察を行い、形態学的な変化の有無を確認する予定である。さらに、電子スピン共鳴(ESR)を用いた予備実験も行った。4-オキソ-TEMPOとフェリシアン化カリウムの細胞膜透過性の違いを利用したESRスペクトルの解析結果から、殺菌試験により細菌芽胞の外膜や内膜が損傷されている可能性が示唆された。今後より詳細なスペクトル解析を行うことで、膜損傷の有無に加え、芽胞内部の回転相関時間や粘性について考察し、内部構造の性質変化の視点から殺菌機序を探索したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細菌芽胞に対するin vitro殺菌試験が概ね終了し、効率的な殺菌条件を確立できた。また、殺菌作用機序の探索についてもTEM観察やESRを用いた実験を開始して予備的な結果を得るに至っており、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、殺菌機序解明に向けて、以下の実験を行う。まずは殺菌処理後の細菌芽胞の形態学的な変化について、走査型顕微鏡(SEM)やTEMによる観察を行う。また、ESRを用いた実験で、膜損傷の有無や、内部構造の性質変化について考察する。さらに、HPLC解析を用いた、芽胞コアからのジピコリン酸溶出の確認や、DNA酸化ストレスELISAを用いたDNA酸化障害の確認を行うことも予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は複数の国内学会および国際学会のための旅費を計上していた。国内学会に参加し、研究成果を発表したが、国際学会は新型コロナウイルス感染拡大の影響により参加を見合わせたため、旅費を使用しなかった。次年度使用額は、今後の実験に必要な試薬や消耗品の購入、および国内外の学会で成果発表を行うための費用として使用する。
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