研究実績の概要 |
義歯は複数の構成要素から成り顎堤の欠損形態も多様であることから、個々の患者の口腔内状況に応じて適切な材料とその適応部位をカスタマイズして設計することが、患者の良好な咀嚼機能回復に重要である。本研究では、インクジェット3Dプリンターによるマルチマテリアル積層造形技術を義歯製作に応用し、色調の異なる歯肉部と人工歯部の同時造形を試みた。3Dプリンター (Polyjet J55 prime, Stratasys, USA)を用いて人工歯部および歯肉部の同時積層造形を行った。歯肉部にはマテリアルのうちRGD851 Vero Magenta を選択し、人工歯部には RGD835 Vero Whiteを選択し、自然な色調を再現することに成功した。製作した試料を2つのグループに分け、うち1つのグループはサーマルサイクルを10,000回(冷温 5°C 、高温 55°C を30秒ずつ交互)、 サーマルサイクル試験機 (Thermal cycling K178)を用いて行った。続いて、歯肉部と人工歯部の境界部における接着強度の評価のためせん断試験を、万能試験機(AG-X; Shimadzu Corp)を用いて、荷重500 N 、クロスヘッドスピード1mmで人工歯部と歯肉面境界部に90度の角度で圧を加え、試料が破断するまで行った。比較の為既存方法で同様の試料も製作した。サーマルサイクル前は、既存手法の試料の方が破断強度が有意に高かったが、サーマルサイクル後、既存手法では強度が有意に低下したのに対して、積層造形体ではほとんど低下が見られず、既存手法の強度を有意に上回った。
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