研究課題/領域番号 |
21K17060
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
吉原 翠 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70882330)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胃食道逆流症 / 摂食嚥下障害 / 口腔生理学 / 誤嚥性肺炎 |
研究実績の概要 |
超高齢社会となった日本において,肺炎は高齢者の主たる死亡原因であり,中でも摂食嚥 下機能の低下に伴う誤嚥性肺炎の発症数は加齢とともに増加している.誤嚥性肺炎は,嚥下咽頭期障害が主たる原因となる呼吸器感染症であるが,高齢者に多い消化器疾患である胃食道逆流症(GERD)患者でも,誤嚥性肺炎の発症率が高いされる.胃酸を含む逆流物を原因とする逆流性誤嚥は重篤な肺炎を発症し得るにも関わらず,GERD患者における誤嚥性肺炎の発症機序については不明な点が多い.本研究は申請者が培ってきたモデル動物を利用した実験系を駆使して,咽喉頭への酸の長期的酸曝露が嚥下・咀嚼動態に与える影響,メントール投与がもたらす効果について,神経生理学・薬理学的手法を用いて検証することを目的とした. 令和3年度は咽喉頭酸逆流によって生じる嚥下誘発変調の機序解明を進めるため,咽喉頭の感覚を支配する上喉頭神経(SLN)の神経活動記録を行い,同領域への化学刺激によりSLN活動がいかなる変調を受けるか検証することとした. 実験には7-10週齢のウレタン麻酔下のSD系雄性ラットを用いた.喉頭に生理食塩水,蒸留水,KClを順に滴下し,SLNの応答を1分間記録した.各刺激の間に喉頭吸引を行い,前に滴下した試薬および分泌物の影響を排除した.SLN活動はKCl投与時に最大の応答を示した. しかし,現状では神経活動記録中に神経が傷害されて正確な応答を示さなくなってしまう場合が多く,安定してデータをとることが難しい.そのため,SLNの応答を記録できる時間が短く,検証できる試薬の数が限られている.今後安定して神経記録が取れるよう,技術的な向上と実験環境の整備が望まれる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
神経記録にあたっては神経被膜の正確な分離が必要となるため,必要機材として顕微鏡や手術器具を手配し,実験環境の整備を行っている.しかし,当研究室のもともと行っている筋電図記録に比較して,神経記録は精密な手技を要するのみならず,周辺機器によるノイズ等の影響を受けやすいことがわかった.現在も,神経記録の実施経験がある他の研究室の指導を仰ぎながら,実験環境の整備を行いつつ手技の習得を試みている.一方で,COVID-19感染拡大の影響により実際に他研究機関にて設備等を見学することは困難であり,技術の獲得には時間を要する.上喉頭神経記録実験を今後も継続する予定であるが,実験計画としては遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
実験環境の整備をすすめ,神経記録手技の向上に努め,上喉頭神経の活動を安定して記録することを目指す.その上でカプサイシン持続刺激による上喉頭神経の変調を記録し,TRPV1持続活性化による機械刺激誘発嚥下変調のメカニズム解明を目指す.神経記録が安定して取れない場合は,持続刺激ではなくKClを含む種々のカリウム塩やナトリウム塩等の試薬の単回投与を行い,神経活動の変調や嚥下誘発効果を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)動物の購入数や試薬購入数が想定よりも少なかったため. (使用計画)次年度の動物購入及び神経記録に必要な手術器具や周辺機材にあてる.
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