研究課題/領域番号 |
21K17062
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
上原 文子 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (50878288)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 咀嚼 / アミラーゼ活性 / 血糖値 / 食後血糖 / 糖尿病 / 肥満 |
研究実績の概要 |
本研究では,「多く噛む人ほど肥満や糖尿病が少ないのか、 同程度の咀嚼回数で肥満度に違いがあった場合それは何の違いによるのか」という問いを掲げ,咀嚼と唾液に着目し,咀嚼回数・アミラーゼ活性と血糖値の関係を明らかにする. 本研究では,肥満・糖尿病等の生活習慣病患者,その予備群を対象としたおにぎり(1個 100g)摂食時の咀嚼回数・取り込み回数,食事時間・咀嚼スピード・一口当たり回数,耐糖能を食後2時間計測し,関連を分析する.さらに,唾液中の消化酵素であるアミラーゼ活性および唾液量,舌圧,咬合力,咀嚼能率等の口腔機能の調査を行う. 対象者をHbA1cの値から3群(健常成人:HbA1c5.5未満,境界型~軽症糖尿病患者:HbA1c5.5以上7.0未満,2型糖尿病患者: HbA1c7.0以上)に分け,おにぎり摂取時咀嚼回数・摂取時間・咀嚼スピード・一口当たり咀嚼回数・取り込み回数およびアミラーゼ活性,唾液量の群間差異を検討すべく,昨年度31名の被験者の計測を実施した. HbA1cの値から,5.5未満の健常成人19名,正常高値(HbA1c:5.6以上~6.0未満)11名であり,境界型と診断されるHbA1c:6.0以上~6.5未満の被験者は1名だった.Spearmanの順位相関係数を用いてアミラーゼ活性との相関を認めた項目は30分後の食後血糖(r=0.205)だった.中央値の19.0 klU/L以上をアミラーゼ活性高値群(15名,平均38.4klU/L),19.0 klU/L未満をアミラーゼ活性低値群(15名,平均8.0 klU/L)とし,2群間でMann-Whitney U Testを用いて比較した.アミラーゼ活性高値群では,食後30分後食後血糖値(p=0.04),アミラーゼ活性値(p=0.00)が有意に高かった. アミラーゼ活性の違いは,食後30分後血糖値に影響を与える可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初,集まった被験者の中にはもっと多くの境界型~軽症糖尿病患者や2型糖尿病患者が含まれていることを期待し,本研究課題;3群(健常成人:HbA1c5.5未満,境界型~軽症糖尿病患者:HbA1c5.5以上7.0未満,2型糖尿病患者: HbA1c7.0以上)に分け,おにぎり摂取時咀嚼回数・摂取時間・咀嚼スピード・一口当たり咀嚼回数・取り込み回数およびアミラーゼ活性および唾液量の群間差異を検討する;を設定した.しかし,集まっていただいた被験者のHbA1cを計測したところ,大多数の被験者が正常値の範囲内であった.そのため,当初予定していたHbA1cの値に基づいて3群分けし,各測定項目を比較することができなくなってしまった. その代わり,アミラーゼ活性値や唾液量,咀嚼回数などの様々な項目について,高値群と低値群に分けて相関の有無を調べる事となった.当初の計画とはやや異なった分析をせざる終えなくなったが,関連のある項目も発見することができ,今後の更なる検討課題としたい. また,より多くの境界型~軽症糖尿病患者や2型糖尿病患者を含む被験者を集める方法について,研究に参加してくれる被験者を公募するのみではなく,当院の内科などに既に糖尿病の診断を受けている方や家族に糖尿病の方がいる方を探して,声がけするなど別のアプローチを検討する必要があったのかもしれない.
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要の欄には,文字数の制約上記載できる情報が限られており,主にアミラーゼ活性についての点にしかコメント出来なかったが,それ以外の計測項目についての結果もまとめ,可能であれば学会や論文にまとめ発表を行う. また,可能であれば境界型~軽症糖尿病患者や2型糖尿病患者のようなHbA1cの値が高値である被験者を集めて,現段階で得られている結果と比較検討を行いたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度と同様に,コロナウイルスの影響で被験者を病院内にある施設に集めて計測することが困難な状況が続いていた.そのため,当初予定していた被験者に支払う謝礼金などが使用計画額と異なってしまった.今年度は,もし可能であれば境界型及び2型糖尿病のHbA1cの基準に当てはまる被験者を集めて計測を行いたい.
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