2023年度は,チタンベースのデザインとジルコニアアバットメントの力学的特性との関連を評価した.試験条件は,「歯科用骨内インプラントの動的疲労試験」の規格であるISO14801を,本研究で行う破壊試験の参考とした.近年は,周囲の骨吸収や軟組織退縮を防ぐのに有利であるテーパージョイント型のインプラント体の選択機会が多いことを前提条件とした.チタンベースのデザインに関する検討については,Straumann社の純正チタンベースを模したデザインを本実験における基本型(R型)とし,カスタムチタンベース(松風)を用いて製作した.更にベース高さ,ベース厚み,インプラント体との連結長さを変更パラメータとした,5種類(RT型,S型,L型,R-S型,S-S型)のカスタムチタンベースを加えて,計6種類の同形状ジルコニアアバットメントを製作した.それぞれの試験体アバットメントについて負荷試験機(Electro Puls E3000,INSTRON)を用いて破壊試験を行うことで,チタンベースのデザインとジルコニアアバットメントの破壊強度との関連について評価を行った. 破壊試験前後のインプラント体は,マイクロCTにて撮影し,解析ソフト(TRI/3D-BON,RATOC)上でそれぞれ三次元モデルを構築,重ね合わせを行った.この重なりからはみ出した部分の体積をインプラント体の変形量,すなわちアバットメント破壊に先行してインプラント体に及んだダメージの大きさと捉え,新しい側面から力学的評価を行った. 以上の実験より,チタンベースの高さが大きいほど,ジルコニアアバットメント自体の破壊強度は向上することが明らかとなった.また,チタンベースとインプラント体との連結長さが増すと,ジルコニアアバットメント破壊強度はより向上する一方で,破壊に先行してインプラント体がダメージを受けやすくなる可能性が示唆された.
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